障がい者用GHは「住宅」 管理組合と運営側の和解が成立 「所見」で是非に言及 7/1 大阪高裁

投稿日:2024年08月10日 作成者:福井英樹 (287 ヒット)

住戸を障害者用グループホーム(GH)として利用するのは管理規約に違反しているなどとして大阪市の管理組合が住戸を賃借する社会福祉法人に対し、区分所有法57条に基づく行為の停止などを求めた訴訟の控訴審は7月1日、大阪高裁(阪本勝裁判長)で和解が成立した。GHは管理規約上の「住宅」に該当し、規約に違反しないことを確認するなどの内容。和解条項には高裁の「所見」が付され「地域共生社会の実現により、障害者の有無にかかわらず多様性を認め合いながら地域で共に生活することを目指すとする障害者基本法の基本理念と、消防法令の順守による防火、防災が相反するものであってはならず」と言及している(2022年2月5日付・第1194号に関係記事)。

「多様性認め合い地域で共に生活」障害者基本法の理念提示

22年1月20日の大阪地裁判決では管理組合側が勝訴していた。

所見で、阪本裁判長は、争点となった管理規約の専有部分の用途について「住宅専用」に該当するかどうかは「居住者の生活の本拠として使用されているか否かによって判断すべき」だとし、GHが利用者の生活拠点になっている点から管理規約には違反しない、との解釈を示した。そのため「共同の利益に反する行為に該当するとはいえない」と述べた。

地裁判決は「住宅使用」かどうかについて、管理規約で予定されている「管理の範囲」であることも要する、と認定したが、所見ではこれを否定。「要件であるとする根拠はない」とした。

管理組合が専有部分をGHや特定防火対象物に供することを禁じた規約変更についても言及。区分所有法31条1項後段の特別の影響を受ける区分所有者の承諾の「要件を充足すると解することに疑義がある」とした。

同条項については和解に当たりGHは除外する旨に変更した。

和解条項では規約に反しないことのほか、和解に当たり管理組合が定めたGH開設運営細則に基づき同法人が消防法に基づく防火対象物定期点検報告や消防用設備点検の費用を負担。新規開設に際してはあらかじめ理事長に書面で申し出るほか開設時にも届け出る。

また同法人がGH全2戸内の自動火災報知設備と火災通報装置を連動させマンション1階の防災センターなどに自動通報することを約束するなどの内容も盛り込まれた。

地裁判決はGHとしての住戸利用を規約違反認定。GHの使用に伴い管理組合が防火対象物点検義務などを負うことから「経済的負担等に影響を及ぼすことはあきらか」などとして「「共同利益背反行為」を認め同法人に使用停止などを命じた。

法人側は不服として22年1月24日に控訴。昨年9月21日に弁論が終結し、同日大阪高裁が和解を勧告していた。和解期日を経て今年1月31日には判決を予定していたが取り消し。再び和解期日が設定されていた。

社会福祉法人側代理人の藤原航弁護士は、高裁の所見について「1審の判断をひっくり返してもらわないと和解はできないと言っていた。それが最低条件というのが私たちの主張」とし、和解には「高裁による地裁判決認定内容の否定」が必要だったと語る。

控訴審では「裁判所も障害者GHは住宅だと考えていた」とし、和解に応じなかった管理組合側に判断を「ひっくり返すということを言ってくれて、そこから変わった」と振り返った。

「裁判所は早期解決の面もあったし、判決を書いて(社会福祉法人側を)勝たせることができたとしても抜本的な解決にならないと考えていた」とも。

特定防火対象物となる用途を禁じた規約の「有効性については判断していないので、また裁判になる」リスクがあったと述べた。

以上、マンション管理新聞第1275号より。

 


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