長計 自らカスタマイズ 『カステル蓮沼』築50年 52戸 東京都板橋区 管理会社作成の「フルスペック」計画を拒否
管理計画 認定マンションを訪ねて
3月17日、東京都板橋区の管理計画認定第3号になった「カステル蓮沼」(築50年、52戸)。認定を目指すきっかけになったのは「築50年」という節目だった。
管理組合理事長の塩川孝史さん(71)は「『50期』ということで何かメモリアル的なことがあればよいなと思っていたんです」と説明する。
そんなことを考えていた昨年9月ごろ、区から郵送されてきたパンフレットで管理計画認定制度を知る。
同封されていたチェックシートを試してみると、認定される可能性があり「区に事前相談してみよう」との判定が出た。
「ぜひやりたい」。理事会でも賛同を得て、認定に向け動き出すことにした。
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区に相談した結果、認定を得ることには長期修繕計画・修繕積立金、管理規約の見直しが必要だと思った。「要援護者名簿の整理・名簿取り扱い規定の整備」という区の独自基準も満たしていなかった。
長期修繕計画は2020年に管理会社が見直したものだったが、次回大規模修繕実施時期の29年時点で約1億円が不足。計画最終年の50年では7000万円以上が不足する計画になっていた。
29年実施予定の大規模修繕工事は鉄骨製の非常階段をコンクリート製に、また共用玄関をオートロックにしたり、駐車場のアスファルトを打ち替えたりと多くの改良・改善工事がが盛り込まれ、通常の大規模修繕の2倍近い約1億4000万円が計上されていた。
「全体の資産価値を上げるフルスペックの提案しかできない」という管理会社の方針に基づくものだった。
しかし塩川さんの考えは違った。「まあ建物の価値は上がるけど、そこまでカネ払えないな」
不足額が出る、この計画は管理計画認定を目指す前から理事会で問題になっていた。塩川さんも管理会社に改善を求めていたが、見直しの費用が委託費とは別に40万円かかる。
だが「フルスペックの提案しかできない」という管理会社の方針があるため、カネを払って計画の見直しを行っても「結局同じものしか出てこない」(塩川さん)。その一方、認定を得るには長計の改善は不可欠だ。
「それならこの際、自分たちで見直しをしよう」。塩川さんら理事はそう考え、長計を自ら「カスタマイズ」することにした。
見直しに際し、理事がまず着目したのは、約1億円が不足する29年実施予定の大規模修繕工事だった。
そもそも玄関をオートロックしたところで、マンションにはさまざまな新入経路があり防犯効果を狙うのなら大した期待はできないー。こんな調子で不必要と判定した工事をカット、内容を変更するなどしコストダウンを図ることにした。
その結果、次回大規模修繕工事費を7500万円程度まで圧縮。修繕積立金の値上げも決断し、不足が出ない計画にした。
計画期間を10年延伸し築87年までカバーする一方、築80年以降に建物を解体する可能性を想定し「建物解体費用」として9200万円を計上する「カスタマイズ」も行った。
大規模修繕周期も13年に変更した。「その方が、おカネがたまるから」(塩川さん)と屈託がない。
長計のカスタマイズに加え、認定取得に際しては区の助言が支えになった。塩川さんは「職員の方がうちのマンションに10回以上も来訪して、どうしたら認定基準をクリアできるか支援してくれた」と感謝する。
今後は「100年マンションを目指したい。子ども、孫の代になっても赤字になっているマンションにするわけにはいかないです」と笑顔で語ってくれた。
認定に際しては長計の見直しに取り組み、工事項目の削減や内容の追加・変更を行った。管理組合が自ら考え直しを行った点に意義があったといえそうだ。
以上、マンション管理新聞第1237号より