制度開始前に申請を決議 築浅物件ならでは? 積立金の額で「理由書」 「レ・ジェイド新金岡パークフィールズ」築4年 204戸(堺市 北区)管理計画 認定マンションを訪ねて
1月1日に市内第2号目の管理計画認定を取得した大阪府堺市の「レ・ジェイド新金岡パークフィールズ」(築4年、204戸)。「令和」生まれの認定マンションだ。申請は昨年12月22日。
認定申請を決めた当時の理事長で前監事の辻本直之さん(41)は「適切な管理が出来ていることを一般の住民さんに周知するツールとして、私が個人的に『このマンションは良い』と言うより、お墨付きをもらった方が納得されると思いました」と、認定取得の動機を話す。辻本さんはマンション管理士でもある。
制度を知ったのは2020年ごろ。『マンション管理センター通信』や新聞などで国が制度を始めることを把握した。その後、具体的な認定基準が示され「国の基準だけならいけるんじゃないか」と手応えを感じた。
管理組合は21年11月21日の通常総会で認定申請を決議した。改正マンション管理適正化法全面施行の4カ月以上も前だ。堺市の制度開始時期や認定基準も決まっていなかった。
そのため総会の議案は「申請時期は4月以降とし、具体的な申請時期や手続きなどは理事会に一任していただく形にしました」(辻本さん)。申請手数料については「5万円以上にはならないだろうと5万円の予算を取りました」(同)。
元理事長の辻本さん 自身で作成、市に提出
昨年5月に市の推進計画案が公表され、6項目の独自基準が判明した。
旧耐震マンション向けの項目が複数あったため、実質的にクリアしなければならないのは∇災害時の備えや対策などを記載した「防災アクションプラン」を管理規約か使用細則に定める∇管理組合専用ポストがあるーの2項目だったが前者がクリアできていなかった。
管理規約に防災関係の規定はあったが、具体的な行動計画ではなく使用細則も防火管理に関するものだった。
このとき監事に就いていた辻本さんは「高経年マンションなら長年のノウハウを生かして作っている管理組合もあるんでしょうけど、ここにはもともとなかった」と振り返る。
認定申請に向けた市への事前相談では市から新規作成を求められたが、市のひな形や作成の手引きがあったため「大変参考になりました」(辻本さん)。
防災アクションプランには、かまどベンチや雨水を飲料水に生成できる設備など新築時からある備え、年1回以防災防災訓練実施などを記載した。プランが「絵に描いた餅にならないよう」(同)、昨年10月に初の防災訓練を実施。訓練は地域と連携して行った。
同プランは11月20日の通常総会で使用細則として位置付けることを決議した。あらかじめ市にはプランの内容に加え、当日の議案も確認してもらった。
この総会で辻本さんは監事を退任し一般の組合員になったが、理事長の委任を受けて市と協議を続けた。
国の認定基準ではほぼクリアしていたが、市から長期修繕計画で指摘された。国の同標準様式にある長計見直しの項目が入っていなかったからだ。
「管理会社に確認したら管理業務の一環でしてくれるということで、それを市に伝えたら『そういうことであれば問題ないです』と認めてもらいました。」(同)。
長計の計画期間全体の「修繕積立金の平均額」では国の修繕積立金のガイドラインの目安を下回っていた。
辻本さんによれば、同マンションの平均額は1平方メートル当たり月216円。国が求める目安の同200円を上回っていたが、機械式駐車場があるため加算され「本来237円ないとだめ」で21円下回っている。
平均額が目安を下回っているのは、「ほぼ新築」だったため30年の長期修繕計画期間内に排水管・ガス管、エレベーターの取り替えなどが含まれていなかったからだ。
こうした理由に加え、今後の計画・積立金の5年ごとの見直しを「望ましい」と記載した、専門家による著しく定額でない旨の「理由書」を提出し市に認めてもらった。
国の認定事務ガイドラインによれば、理由書を作成できるのは建築士かマンション管理士。同マンションではマンション管理士の辻本さんが作成した。
申請予定マンションの住民が作成したことになるが、「住民のマンション管理士はだめだというのはどこにも載っていませんでした」と、(辻本さん)。
市にも「『私でもいいんですか』『誰か別の人を探してきますけど』と話しましたが『できます』ということで確認しました」と振り返る。
辻本さんは「全部市に事前に確認してもらった上で話を進めてきました。こちらはクリアできると思っていても、はねられる可能性もありますし、そうなれば改めて手間もかかりますしね」と話す。
今後については「認定を取ることがゴールではないと思う。認定を取り続けることで管理水準の維持や向上を図れて、結果としてマンションを良くしていくことにつながる」と、期待している。
以上、マンション管理新聞第1228号より。