割高を理由に水道料金を支払わないことは共同利益義務違反にあたるか?福井英樹マンション管理士総合事務所

投稿日:2014年05月29日 作成者:福井英樹 (2356 ヒット)

「一括検針一括徴収制度」を採用している管理組合では、割高等の理由で水道料金を支払わないことは区分所有法で言う「共同利益義務違反」にあたるか?また、長期滞留区分所有者の包括承継人や特定承継人は当該支払い債務を引き継ぐことになるかを検証する。

区分所有法第7条第1項は、「規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権について債務者の区分所有権及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する。」と規定している。

区分所有法第8条は、「第7条第1項に規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる。」と規定している。

区分所有法第30条第1項は、「建物又は敷地若しくは付属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律で定めるもののほか、規約で定めることができる。」と規定している。また、同3項は、「規約は、専有部分若しくは共用部分又は建物の敷地若しくは付属施設につき、これらの形状、面積、位置関係、使用目的及び利用状況並びに区分所有者が支払った対価その他の事情を総合的に考慮して区分所有者間の利害の衡平が図れるように定めなければならない。」と規定している。

小職が所属する某判例研究会の判断
建物の構造上や水道局の事情により一括検針一括徴収制度しか採用できない場合は、「特段の事情」に該当し、規約事項として有効であり、そこに明記された債権は先取り特権となる。
というのは、水道局の方針により、一括検針一括徴収制度を取らざるを得ない場合は、下記の根拠を以て区分所有者相互間の事項に該当すると判断する。
従って、長期水道料金未払い区分所有者並びに当該承継人は管理費と同様に当然に当該水道料金を支払う義務を負う。長期滞留者は区分所有法でいう共同利益義務違反者にあたり、承継人も当該義務違反を当然に承継することになります。前任者の債務と言って支払い債務をのがれることはできません。

根拠1.基本料金は給水管の敷地引き込み口径で決められている。引き込み口径は総戸数(総水栓数)から居住者全員の生活に必要な水道水の量を算定し、これに見合う水道水を取り込むための合理的な管(敷地引き込み管口径)の大きさが決められている。

根拠2.空家(不在住戸)や未払住戸といえども一括検針一括徴収の場合、水道局に支払う一括徴収料金の中の基本料金には不在住居や未払い住戸の想定水道使用量も加味されていることになります。すなわち、水道局に支払う水道料金は専ら各戸専有部分のことでは済ませられなくなり、引き込み管という共用部分との関係が存在し、これを以て区分所有者相互間の事項に該当すると考えられる。


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