適正化法・建替え円滑化法改正案 6/16衆院本会議で可決・成立 管理計画認定で『差別化』
6/12国土交通委員会で審議 「私有建物に公的関与、画期的」
マンション管理適正化法・建替え円滑化法の改正案が6月16日、衆議院本会議で全会一致で可決、成立した。12日には国土交通委員会で審議され、全会一致で原案通り可決されている。審議では「マンション管理適正化推進計画」に期待される効果、管理計画の認定を受けるメリット、「要除却認定」を行う上での基準などについての質問があった。5会派共同提案による付帯決議案も可決された。
委員会では7人が質疑。政府参考人として眞鍋純・国交省住宅局長ら6人が出席した。
広田一議員(無所属)は今回の法改正で管理組合の役割・重要性がどう変わるのか尋ねた。
答弁した赤羽一嘉国交相はまず、「改正法案で非常に画期的なことはマンションという私有の建物に対して公的な関与を初めてする」と言及。その上で「国による基本方針の策定、地方自治体による計画制度・指導助言等の創設といった措置を定めているが、だからといって管理組合の役割はいささかも変わるものではない」と述べた。
地方自治体が「マンション管理適正化推進計画」を策定した場合、当該区域の管理組合が認定を受けられる「管理計画」について広田議員は「目に見える効果があるかは疑問」だとし、認定取得のメリットなどについてただした。
眞鍋住宅局長は認定取得のインセンティブ(誘因策)・メリットについて「さらなる検討が必要。業界団体・地方自治体とも相談しながら中身について検討を進めてまいりたい」と答弁した。
井上英孝議員(日本維新の会)は国交相を指名し「マンション管理適正化推進計画」制度に、どんな効果を期待しているか質問した。
赤羽国交相は、制度の概要を説明し「公的な関与をしながら、それぞれのマンションでしっかりとした管理計画を立て自ら管理の水準を上げてもらうということが大事だと思っている」と答弁。
制度の効果については「施行して時間の経過の中で、どのマンションが管理がしっかりしているかというのが明らかになっていく。ある意味差別化が図られ、それが最終的に全体的な底上げになっていくのではないか」と期待を示した。
「一番大事なことは自分たちが一つのコミュニティーとして、主体者としてどう管理をしっかり適正化していくのか。日ごろから管理が適正なマンションほど長寿命化すると思う」持論を述べる一幕もあった。
井上議員は適正化推進計画の策定が任意とされている点を取り上げ「なぜなのか。全国一律にした方がいいのかな、という思いもある」とし、見解を求めた。
眞鍋住宅局長は、マンションの「立地や老朽化の状況を踏まえるとマンション管理の適正化に向けた対策・政策のニーズは全国一様ではないと考えている」と答弁。
地方自治体における「事務体制」の実情も考慮し「全国一律ではなく任意、つまり義務付けではない形での制度化を企図した」と説明した。
適正化推進計画の策定について、眞鍋住宅局長は「まずはマンションが多く立地し管理上の課題が顕在化している都市部で先行的に中心に行われることを想定している」と言及。
その一方「そうはいっても、できるだけ多くの地方自治体に早期に計画を作成していただきたい。こういう意図もある」。このため国による計画記載事項の例示、地方自治体への説明会の開催などを行い「計画が適切に作成されるよう自治体に働き掛ける。相談にも積極的に応じて進めて行きたい」と述べた。
井上議員は、計画策定に伴う自治体の事務負担の増加を指摘し計画作成に対する国の支援や負担軽減策についても尋ねた。
眞鍋住宅局長は負担軽減策として、計画を策定する上で必要になる実態調査等の取り組みについて「実態調査を行う上での予算措置も講じてサポートする」。
管理計画の認定事務に関しても認定基準を提示しガイドラインを作成する、とした。
法案に、認定事務の一部を指定する法人に外部委託できる規定がある点から「マンション管理士等の専門家の活用あるいはマンション管理適正化推進センターの技術的な協力も併せて講じ、自治体の負担の軽減に努めたい」と答弁した。
建替え円滑化法上の敷地売却制度の実績についても尋ねた。眞鍋住宅局長によれば、今年4月時点における「要除却認定」は24件。敷地売却に係る「買受計画認定」は10件。
今回の法改正で「今後実績が増えていくと」と見込んでいる」と述べた。
三谷英弘議員(自民)も管理計画認定取得のインセンティブについて言及。「税制上の優遇措置を講じるとか、そういうことをする予定はあるか」と、具体例を挙げ質問した。
眞鍋住宅局長は「まだ施行までに時間があるので、税制上のインセンティブについても検討していきたい」と述べるにとどめた。
改正法案で、多数決による敷地売却決議を行う前提となる「要除却認定」要件が拡充された点も取り上げた。
新しく要件の一つに加わった「外壁等が剥落し落下することにより周辺に危害を生ずる恐れがある」を例に出し「非常にあいまいな書き方。基準を明確にしてほしい」とただした。
眞鍋住宅局長は「具体的な基準は国交省が今後告示として定める」と答えた。
「外壁の剥落・落下の恐れのあるマンション」については「単なる部分的な落下や剥落ではなく広範囲でそうした状態が生じている、あるいは鉄筋の腐食を伴うひび割れなどが発生している」などと例示。
「建物全体にわたって老朽化が進行しているマンションを想定して基準を作ってまいりたい」と答弁した。
眞鍋住宅局長は「基準の内容が不明確だと判断があいまいになってしまう」とし、有識者などの意見も聞きながら客観的に判断出来るよう明確な基準を定めたい考えも示した。
古川元久議員(国民民主)は、現在既存マンションで起きている問題を減らす上では分譲前に、さまざまな基準を確認していく必要がある、と指摘した。
多くの新築マンションで修繕積立金の積み立て方式が、入居当初は積立金額が低く設定される「段階増額方式」に設定されている点に触れ「分譲前に管理規約、長期修繕計画、積立金の積み立て方式、積立額をチェックすることが必要ではないか」と持論を展開。
その内容が適当かどうか、建築基準法上の建築確認のように「行政が内容を審査して確認することを必要とする法改正を次の段階で考えていくべきではないか」と迫った。
眞鍋住宅局長は、積み立て方式については「均等積立の方が安定だと考えている」と答弁したが、一方で積み立て方式は管理組合の合意形成の中で決められるものだと述べ、「行政が一律にチェックする、段階積み立て方式を禁止するということはなじまないと考えている」と答えた。
古川議員は「ある一定の許容の範囲内で、その範囲内に入っているかどうか、そういう確認は必要にするという法改正は考えるべきでは」と、再度国交相にただした。
赤羽国交相は、今回の法改正でマンション管理に地方自治体が関与する点から、「それぞれの自治体で点検していただいて実態に合わせた対応をしなければいけない」と答弁。
「その中で、これまでの常識とは異なった、踏み込んだルールというのも作らなければいけない局面も出てくるかもしれない」と応じた。
「最初からできないということではなく、その時はしっかり検討していかなければならない」と答弁を締めくくった。
◇
審議はおおむね2時間半程度で終了。採決後、立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム、日本維新の会・無所属の会、自由民主党・無所属の会、公明党、共産党の5会派による付帯決議案の共同提案があり、原案通り可決された。付帯決議の内容は下表参照。
(表)
付帯決議の内容
政府は本法の施行に当たっては次の諸点に留意し、その運用について遺漏なきような期すべきである
1 本法により新たに定められる管理計画認定制度や敷地分割事業制度等が円滑に活用されるよう施行までに十分な準備期間を確保した上で地方公共団体、管理組合等に対し制度の周知徹底を図ること
2 地方公共団体によるマンション管理適正化推進計画の作成の促進を図るとともに地域のマンションの実情に即し、実効性のある内容となるよう、必要な支援や助言を行うこと。また管理が適正に行われていない等のマンションに対する地方公共団体の積極的な関与が促進されるようマンションの管理状態を把握するための指針の作成、地方公共団体による管理組合への専門家の派遣の取り組み等に対する支援、区分所有者等からの相談受け付け体制を整えることについての助言を行うこと
3 管理計画認定制度の地方公共団体による運用が円滑かつ適切になされるようマンションの修繕、その他の管理方法や資金計画等について明確な認定基準を定めることに加え報告・聴取等を含めた運用の在り方を指針等によって示すこと
4 今後マンションの老朽化による課題がさらに顕在化すると見込まれることを踏まえマンションの安全性等について継続的に把握するとともに再生を進める上で資力の乏しい区分所有者の負担軽減等も含め必要な検討を行うこと
5 築年数の経過に従い区分所有者の高齢化が進行するとともに賃貸住戸や空き住戸が増加する傾向にあることに鑑み必要な調査を行い適時適切な大規模修繕が実施できていない等の維持管理上の課題を抱えるマンションの実態把握に努めること
以上、マンション管理新聞第1141号より。