『一括検針』は配慮不可欠 各世帯への「還元」必要に 新型コロナ感染拡大で各自治体 水道料金減免へ
新型コロナウイルス感染拡大に伴う住民支援策として、水道料金の減免や免除に踏み切る自治体が増えている。大阪市は3カ月、名古屋市は2カ月分の水道基本料金を免除する。ただマンションで「一括検針」方式が採用されている場合、基本料金が免除されるのは水道局に水道料金を支払っている管理組合だ。免除された料金はどうすればいいのか。
大阪市水道局は、7月検針分から3カ月分の上下水道の基本料金を全額免除する。
名古屋市上下水道局は水道基本料金を2カ月分免除、堺市上下水道局は同料金を4カ月分8割減額する。
新型コロナウイルス感染拡大に伴う住民支援の一環として水道基本料金の免除を決めた自治体は少なくない。特に愛知・大阪・兵庫で水道料金の減免を打ち出すケースが目立つ。愛知では、確認出来ただけでも20市近くが基本料金を一定期間無料にする方針を決めている。
大阪市水道局の場合、1カ月の水道基本料金は935円(税込み)。下水道基本額は605円(同)。合計1540円の支払いが3カ月、総額で4620円が免除される。
マンション等の共同住宅の場合、水道料金は住戸ごとに支払う「戸別検針」、管理組合ら代表者がまとめて水道料金を支払う「一括検針」がある。
ここで問題になるのは、戸別検針なら基本料金を差し引いた額が自動的に請求されるため各世帯が恩恵を受けるが、管理組合が契約主体になっている一括検針の場合、基本料金が免除されるのは管理組合で各世帯には直接恩恵がない点だ。
基本料といってもばかにはできない。大阪市水道局管轄の100戸のマンションなら1540円×100戸分が3カ月、計46万2000円が免除されることになる。
同水道局管轄エリアで一括検針をしている分譲マンションの件数は不明だが、大阪市水道局によれば、分譲・賃貸を含む共同住宅では約2万6000件。
世帯ベースで約54万世帯と戸別検針(約40万世帯)よりも多い。基本料金の減額を決めた同じ大阪の堺市も同様で、上下水道局によると共同住宅約3000件中1943件が一括検針だ。
一括検針が採用されているマンションは、水道料金の減免をどう処理すれば良いのか。
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東京に本社を構え大阪に拠点を持つ管理会社は、管理組合の理事会に局の水道料金減免措置を報告し、減免分を差し引いた額を「各戸に請求する対応を考えているケースが多い」と説明する。各戸には、毎月発行している料金のお知らせで減免・免除になっていることを周知するという。
理事会に順次、局の方針を説明しているという大阪の大手管理会社も「本来の趣旨に沿って基本的には減免の方向だと聞いている」と話す。
別の大阪の管理会社は「各戸に一律減免を反映させることを理事会にお話しすることになるだろう。」水道料金の滞納者に対しても「局の趣旨は経済的な負担軽減なのだから平等に減免することになるんじゃないか」とみている。
その一方、理事会が「減免分は住民に還元しない」と考えるケースもあるかもしれない。その場合、そういった方針を議案に掲げ総会で決議することは可能なのか。
弁護士に話を聞くと「管理組合は水道局の請求に基づき料金を支払っている。(減免分を各世帯に還元しない措置は)結果的に水道局が請求していないものを各世帯に請求していることになり、根拠のない請求になる可能性がある」(香川希理弁護士)との答えが返ってきた。法律上取得する原因がない利益を管理組合が得ている、つまり「不当利得」に該当する恐れがある、という指摘だ。
この場合「仮に、こうした措置を総会で決議したとしても無効になり得る」(同)というから、十分な注意が必要だ。
水道料金の減免措置は、芦屋や奈良など大阪や堺以外の水道事業者も実施を打ち出しているため、大阪の管理会社では「自治体ごとに減免の額や内容が異なるのでリストを作成している段階」としている。
以上、マンション管理新聞第1139号より。