60日間の業務停止命令 ファブリス 社員2人が着服 国交省九州整備局
国土交通省九州地方整備局は5月17日、ファブリス(本社福岡、野田太社長)に対して、マンション管理適正化法に基づく業務停止命令と指示処分を行ったと発表した。業務停止は5月31日から7月29日までの60日間。新規契約の締結などが禁止される。
処分理由は①複数の管理組合で会計収支書面の未作成②複数の管理組合で管理事務報告書の未作成と管理業務主任者による管理者等への交付・説明の未実施③社員による複数の管理組合財産の着服と同事案発覚後に別の社員による管理組合財産の着服④複数の管理組合の同一条件の管理受託契約更新で全区分所有者等への重要事項説明書面の未交付と管理業務主任者による管理者等への交付・説明の未実施⑤同一条件の管理受託契約更新で重要事項書面の管理業務主任者の未記名・未押印⑥複数の管理組合の同一条件の管理事務委託契約締結で管理者等への契約成立時の書面の未交付⑦契約成立時の書面の管理業務主任者の未記名・未押印-。
同整備局によれば、違反は同社からの報告で判明した。
同社によれば、③の被害額などは「管理組合様との約束で公表は控えさせていただいている」としている。①②③④⑥の管理組合数も「公表していない」としている。
③の社員2人は共に60代。当時フロントで、違反や着服行為は福岡県内の管理組合で行っていた。いずれも行為を認めているとし、違反については是正されているという。
着服は2016年12月の社内監査で発覚した。着服機関は12~16年までの5年。手口は、正規の支払いの払い戻しの伝票の中に白紙の伝票を混入させて、理事長から不正に押印を得て出金していた。①②⑥⑦も、この社員による違反。
もう1人の着服が分かったのは、前出の着服が発覚した約2年後の18年10月。同年6月頃に入社し、すぐに管理組合に無断で預金口座を開設。その口座に保険会社が管理組合に支払うことになっていた水漏れ事故の保険金を振り込ませて出金していた。管理組合が同社に保険金が振り込まれていないと指摘して発覚した。この社員は、別の管理組合でも④⑤の違反もしていた。
被害額は同社が全額弁済。社員は17年9月、18年10月にそれぞれ懲戒解雇した。1人に対しては同社が損害賠償の訴訟を起こしている。もう1人は、着服金額を同社に返済中。
刑事告訴は管理組合がしているという。
整備局の発表では業務停止の理由として①②に加え、通常は指示処分の③も挙げている。整備局は「処分の細かいところはお答えしていない」とするが、最初の着服発覚後に再び着服事案が生じた点を重視したとみられる。
同社は「管理不行き届きで恥ずかしい限り。社内の監査が不十分だったことを猛省して、監督官庁のご指導のもと襟を正していこうと思っております」としている。再発防止策では、年2回の社内監査や本社の経理部署での通帳のチェックなどを検討している。
以上、マンション管理新聞第1105号より。