管理費滞納で59条競売請求 支払い再開も「アウト」 管理組合が勝訴 3/4 東京高裁
長期間にわたって滞納していた管理費等の支払いを再開した区分所有者に対する「59条競売」の可否が争われた裁判の判決が3月4日、東京地裁であった。鈴木友一裁判官は「滞納分の支払いに充てることのできる資産は保有していない」と判断し、管理組合の請求通り区分所有法59条に基づく競売と管理規約に基づく弁護士費用約36万円の支払いを認める判決を言い渡した。判決は確定している。
裁判資料によれば、この区分所有者は2012年9月頃から管理費等を滞納。管理組合は15年、管理費等に支払いを求めて提訴し、同年4月勝訴判決を得た。判決では元本約68万円5000円と弁護士費用約22万円に加え、遅延損害金の支払いが命じられた。
翌16年、確定判決を債務名義として管理組合は強制競売に着手。強制競売開始決定にこぎ着けたが、買い受け可能価額が優先債権の見込み額合計に満たない「無剰余」となり、競売を取り下げた。17年には不動産執行に踏み切ったが、執行不能に終わったため同年11月、臨時総会で「59条競売」を可決し18年5月、東京高裁に提訴した。
区分所有者は臨時総会の1カ月程前から毎月管理費等を納めるようになり、今年1月の口頭弁論終結時点まで毎月の支払いを継続している。この時点での滞納金額は、遅延損害金・弁護士費用を除き約136万円だった。
法廷で区分所有者は「第三者から5000万円の返金が見込まれておりそれで返済する」「これ以上滞納しないよう近時は管理費等を支払っている」などと訴え、争う構えを見せていた。
判決で鈴木裁判官はまず、管理費等の滞納は区分所有法6条1項の「区分所有者の共同の利益に反する行為に当たる」と認定した上で、強制競売や強制執行が不発に終わった経緯を考慮。管理費等の滞納による「区分所有者の共同生活上の障害」は著しいと評価し、競売以外の方法では障害を除去して共同生活の維持を図ることは困難だと結論づけた。
区分所有者に滞納額を返済するだけの資産はない、と判断した。
「近時は管理費等を支払っている」との主張に対しては「支払いは続けているものの、滞納分の支払いに充てることのできる資産は保有していないし、自らの収入等から資金を調達できる見込みもない」と、退けた。
「第三者からの返金の見込みがある」などの点については具体的な裏付け資料は何ら提出されておらず、訴訟提起から口頭弁論終結時に至るまで資金調達が実現していない点から「今後も実現可能性は乏しい」と一蹴している。
以上、マンション管理新聞第1100号より。
一般的に、共同利益背反行為をした区分所有者またはこれをするおそれのある区分所有者に対し競売の請求をすることが認められるためには、
①区分所有法6条1項に規定する共同利益背反行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、かつ、
②他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であることが必要であり、
過去の判例でも、当該59條競売が認められず却下された事案が少なからずあります。
しかしながら、上記の事案では、管理費等の長期滞納は区分所有法6条1項の「区分所有者の共同の利益に反する行為に当たる」と認定した上で、強制競売や強制執行が不発に終わった経緯を踏まえ、当該管理費滞納による「区分所有者の共同生活上の障害」は著しいとし、59条競売以外の方法では障害を除去して共同生活の維持を図ることは困難だと結論づけ、59条競売が認められ管理組合が勝訴した典型的な事例で、判決は確定しており、興味深い。