賃料収入「管理組合に帰属」 契約「理事長が社団の名で締結」 携帯基地局の設置に伴う課税措置に異議 組合側の控訴を棄却 10/31 東京高裁

投稿日:2018年12月13日 作成者:福井英樹 (2961 ヒット)

 携帯基地局設置による賃料収入を収益事業だと認定し、管理組合に課税したのは誤りだとして金沢市の管理組合が国を相手に課税処分の取り消しを求めた裁判の控訴審判決が10月31日、東京高裁で言い渡された。秋吉仁美裁判長は、賃料収入は法人税法上の「『法人とみなされる人格のない社団等』に帰属する収益と評価し得る」などとして、管理組合の請求を棄却した。
 裁判で管理組合は一貫して「課税するのなら管理組合ではなく、各区分所有者に課税すべき」と主張した。
 控訴審では一審同様、「共用部分や敷地等の所有権が個々の区分所有者に帰属している以上、そこから発生する収益は各区分所有者が持ち分に応じて収受するものであり、管理組合には一度も帰属していない」と言及。
 通信社と管理組合が結んだ賃貸借契約は「各区分所有者が主体となって管理者を代理人として結んだもの」だとし、総会決議も「各区分所有者の全員が委任の内容を区分所有法上の集会で同意しているだけで、個々の区分所有者の同意であり、団体の決議ではない」などと持論を述べた。
 賃料収入は各区分所有者ではなく管理組合の預金口座に振り込まれていたが、この点については、賃料が「管理組合に滞留することを規約・総会等で承認している」として「管理組合が区分所有者の指示の下、区分所有者の収入・支出の管理を行っているとみるべき」だと訴えた。
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 これらの主張に対して、秋吉裁判長はまず、通信会社との賃貸借契約は「権利能力なき社団の代表者である理事長が社団の名で締結したもの」と認定した。
 その上で、賃料収入は管理組合の「雑収入」として処理されることなどが総会で承認されている点から、その効果は各区分所有者に総有的に帰属し、その収益も管理規約に基づき「総会における団体的承認を受けながら管理・運営されている」と指摘。賃料収入は「個々の区分所有者の個人財産とは異なり、管理組合の団体的規律に従う性質のもの」で、法人税法上の「法人とみなされる人格のない社団等」に帰属する収益だと結論づけた。
 管理組合の「総会決議は団体の決議ではない」とする持論に対しては「総会決議では共用持ち分の多寡にかかわらず1住戸1議決権とされ、共用持ち分に応じた議決権の行使が制限されている」と述べ、「これを各区分所有者の集合体の意思決定とみなしう得るかは疑問がある」と疑義を呈した。
 決議を承認しなかった区分所有者がいた点から、未承認者は「決議で契約の締結を委任したとはいえない」とも。
 そのほか「契約を締結する理由として区分所有者の収入ではなく、管理組合の収入増加につながることが挙げられている」「各会計年度の決算で、各区分所有者に個別に分配されるように処分されることを求めるに足りる証拠はない」などの点から、賃貸借契約は「権利能力なき社団である管理組合を事業主体とするもの」とした。
以上、マンション管理新聞第1090号より。

 携帯電話基地局の設置による収入を得る管理組合が増加しており、また、空き駐車場を外部貸しする管理組合も増えてきており、2010年頃から、税務署がマンション管理組合へ携帯電話基地局収入について税務申告を行うように指導するケースが増えてきています。
 2015年頃には、東京国税局が行政指導文書を管理会社向けに通達し、収益事業を行う各管理組合に対して適正に申告・納税を行うように指導しており、徐々に、収益事業を行う管理組合の納税義務は徐々に周知されてくるようになり、近年のコンプライアンス意識の高まりとともに、申告・納税するマンション管理組合が著しく増加してきています。
 管理組合が「人格のない社団」に該当することが周知されていないとして、携帯電話基地局収入の課税に対し国税不服審判所に申し立てがおこなわれましたが、法の不知により法人税法の規定を適用しないとの規定はないとの理由で、請求は棄却され、管理組合が「人格のない社団」に該当することが明示されています。
 人格のない社団とは①団体としての組織を備え、②多数決の原則が行われ③構成員の変更にかかわらず団体が存続し、④その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理等団体としての主要な点が確定している団体をいうと解されているところ、請求人が区分所有法第30条に基づいて定めた管理規約によれば、請求人は上記①ないし④の要件を充足する団体であると認められるから、人格のない社団に該当する。(行成不服審判所2013年10月15日裁決)
 


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