被害認定見直しで 再建支援金支給取り消し 東日本大震災 返還求め マンション住民4人を提訴 処分『決定は違法』9/27東京地裁 「不利益大きい」法律の趣旨・目的を考慮

投稿日:2018年10月28日 作成者:福井英樹 (2460 ヒット)

 東日本大震災で、「大規模半壊」だった被害認定を「一部損壊」に変更された仙台市太白区の被災マンションの住民4人に対して、被災者生活再建支援金の支給決定を取り消した都道府県会館(現・公益財団法人都道府県センター)が同支援金計325万円の返還などを求めた裁判の判決が9月27日、東京高裁であった。清水智恵子裁判長は、被害認定は「大規模半壊に該当しない」と認定したが「本件取り消し決定は、違法である」と判断し、請求を棄却した。同センターは控訴する構えだ。
 判決によれば、仙台市太白区による当初の被害認定は、支援金対象外の「一部損壊」だったっが、被告以外の住民の要請で再調査し「大規模半壊」に引き上げられた。
 この認定に基づき、宮城県から支給に関する事務の委託を受けていた同センターが支援金支給を決定し4人のうち2人に各50万円、もう2人に各112万5000円を支給した。その後、同区が再度認定を「一部損壊」に変更したことに伴い、同センターは2013年に支給決定を取り消し、支援金の返還を請求した。住民が応じなかったため15年、提訴に踏み切った。
 裁判では、被害認定が大規模半壊に該当するかどうかと、支給の取り消し決定の無効事由の有無が争点になった。
 清水裁判長は、被害調査や判定方法を定めた内閣府運用指針が基になっている調査票を用いた調査は「基本的に信頼性を有する」とし、大規模半壊とした調査は、建築士の資格を持たない職員が共用部分の階段と梁の接合部分に生じたコンクリートの剥離を「梁の損傷と誤認した」と指摘。建築士の意見を踏まえて実施した、一部損壊とした調査は正確で「被害の程度が大規模半壊に当たるものと認めることができない」と判断した。
 支給の取り消し決定につては、支給の取り消しで生じる不利益と、支給維持することの不利益とを比較・考量した。
 取り消しで生じる不利益については、再調査で被害認定に誤りがあった場合に支援金を返還する必要があると、速やかな生活再建を支援する被災者生活支援法の「実効性が失われ、同法の趣旨および目的に反する」と指摘。
 支援金を返還する必要がないことへの「被災者の信頼は、支援金制度の根幹に関わるものであって、これを保護する必要性は高く、本件支給決定を取り消すことによる被告らの不利益は大きい」とした。
 一方、支給を維持することによる不利益については、支給取り消し事由を定めた同センターの業務規定では「偽りその他不正の手段により支援金の支給を受けたとき」などとしており、再調査での誤認という「被告らにおいて何らの帰責性を有しないことは明らかである」と指摘。
 当時の被害認定調査の手続きや内容も公平・公正だったことも踏まえて「適正な支給の実施に対する社会一般の信頼が損なわれる恐れや、多数の被災者の理解を得ながら適正な支援を行うことができなくなる恐れが生じるとはいえない」などとした。
 支給の取り消しで生じる不利益は、支給を維持することの不利益を「上回る」とし「支給決定を放置することが公共の福祉の要請に照らし著しく不当であると認めることはできない」と判断。取消処分は「違法である」と結論づけた。
     ◇
 住民側の代理人弁護士の北見淑之弁護士は「支援法の趣旨と支援金制度について的確に捉えた判決だ」としている。北見弁護士によれば、同地裁ではほかに3つの民事部で同様の訴訟があり、今回の判決以外は敗訴し控訴している。うち一つは14年に住民45人が同センターに処分取り消しを求めた裁判(2014年7月15日付・第945号に提訴記事)。
 同センターの担当者は「判決は意外だった。おそらく控訴すると思う」と話している。
 支援金を返還したのは約90世帯のうち約20世帯という。

 以上、マンション管理新聞第1085号より。


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