倒木、窓ガラス・隔壁板破損も 台風21号 一部でなお停電・断水 管理会社に聞く 簡易トイレ、飲料水提供
9月4日から夕方にかけて近畿地方を縦断した台風21号は、記録的な暴風雨で各地に多数の被害をもたらした。分譲マンションでも強風の影響とみられる倒木、ベランダの隔壁板や窓ガラスが破損するなどの被害が出ている。停電に伴う断水も発生し、9月7日時点で未復旧のマンションもあるようだ。
近畿の管理会社6社に被害状況などを聞いた。今のところ、人的被害は報告されていない。
約430棟を管理している管理会社によれば、被害があったのは98棟。このうち61棟は大阪府。停電に伴う断水が最も多かったが、7日までに解消された。
建物では、主に海に近いマンションで強風の影響とみられる隔壁板の破損や飛散が多いという。飛来物で窓ガラスが破損したケースもあった。順次復旧作業を行っている。
雨水が侵入してエレベーターが停止したケースは6棟あったが「大阪北部地震と比べて早く復旧した。閉じ込めはなかった」そうだ。
約80棟のうち50棟以上が被害に遭った管理会社によれば、十数階部分の隔壁板や窓ガラスの破損が多い。われたガラスの一部が、地上の自動車に当たるケースもあったという。
駐車場の屋根の一部が飛んだり、フェンスが倒れたりする被害もあった。植栽の倒木は30棟に及んだ。
協力会社がガラスの破損など、緊急性の高いものから仮復旧を行っている。
停電や断水は、大阪南部の岸和田市や和歌山県の管理物件で発生し、6日までに解消した。
グループの管理会社を含め約550棟中275棟で同様の被害があった管理会社では、窓ガラスなどの仮復旧を終えたが、7日時点で停電・断水が続いている管理物件が大阪南部の堺市と和泉市で各1棟ある。自治体の給水活動の拠点がマンションの前や近隣に設けられているが、各世帯に水2リットル6本を配布した。
停電でエレベーターが使えないため、避難所に避難している住民もいるそうだ。
527棟を管理している管理会社でも、停電や断水した物件があり「簡易トイレを提供しているが、全部は追い付かない」という。
順次復旧しているが、岸和田など一部のマンションは停電や断水が続いている。
約280棟を管理している管理会社は、停電・断水も含めて管理物件の約7割で被害があり「感覚的には大阪北部地震より多い」とする。神戸市内の受託物件ではエントランスへの浸水、大阪では飛来物や倒れた室外機などが当たったとみられる、隔壁板やベランダ手すりのガラスの割れが、それぞれ多かった。倒木もあった。
停電・断水は、大阪北部や兵庫県尼崎市などの管理物件で影響を受けたとし、マンションで備蓄している災害用物資や自治体の給水活動の拠点を案内するなどした。7日現在、まだ1棟が解消されていないという。
600棟弱を管理している管理会社では、兵庫県内などでスレート屋根の一部が飛んだケースが10棟。一部で前回の台風20号で60平方メートルほど剥がれて飛んでいたという。
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気象庁のデータによれば、大阪市では同日午後2時ごろの最大瞬間風速が47.4メートルと、観測史上3位を記録した。神戸市も同3位の41.8メートル、京都市は同2位の39.4メートルを観測している。
台風が日本海に抜けた同日夜から大阪市内の一部を回ると、この強風の影響とみられる被害が見られた。
北区のマンションでは、共用玄関前に植栽が倒れ込んでいたり、高さ4メートルほどの木が根こそぎ倒れていた。別のマンションでも、公開空地の木が同様に倒れて歩道をふさぐように横たわっていた。けが人がいたかどうかは不明だ。いずれも台風の翌日に伐採して取り除かれていた。
別のマンションでは共用玄関前のロータリーの横にある駐車場で横転した車が植栽に倒れ込んでいた。
管理会社によれば、引っ越し用のトラックが来客用駐車場で横転したが、けが人はなかった。この車も翌日に撤去されていた。
住之江区のマンションでは、ベランダの手すり壁のガラスが破損していた。確認できた範囲でマンションの右側を中心に上階から下階にかけて約190枚が割れていたり、ひび割れがあった。一部では隔壁板や窓ガラス、照明器具なども割れていた。
手すりの壁のガラスはワイヤー入りの強化ガラスとみられ、住民の話では、マンションの手前にある建物の外壁部分が強風で飛散し当たったという。けが人がいたかどうかは不明。
また、近隣のマンションでは、柵が大きく外れていたほか、庇の上裏のボードや支持金物とみられる部材が落ちていた。
分譲マンションかどうかは不明だが、強風による飛来物が原因とみられる人的被害では大阪市港区のマンションで70代女性が亡くなっている。
家族から通報を受けた同市消防局によれば、飛んできた屋根がベランダの窓ガラスを破って自宅にいたこの女性に当たった。この時点では生存しており、病院搬送後に亡くなった。
以上、マンション管理新聞第1082号より。
小職の知るマンションでも台風21号や大阪北部地震で、屋上の高架水槽の架台に亀裂が入ったり、エキスパンションジョイントが崩れたり、手摺下のケイカル板やガラス板が破損した事例を聞き及んでいます。
また、大阪市の高層マンションでは、大阪北部地震の際に、16階以上の部屋の一部で家具などの家財道具が倒れて部屋中がめちゃくちゃになったという報告も入っていますので、高層階では、家具の固定等、揺れ対策が必須となり、怪我をする確率も高くなります。
高層マンションが一般的に地震に強いというのは建物自体が壊れないということであって、高層階では、室内で被災するリスクは低層階より圧倒的に高くなるようです。