ADR事業者認証を取得 日管連8月24日付 検討開始から9年経て実現 マンション紛争では 福管連に続き2件目

投稿日:2018年09月10日 作成者:福井英樹 (2346 ヒット)

4日官報2018年9月 一般社団法人日本マンション管理士会連合会(日管連、親泊哲会長)は、8月24日付で裁判外紛争解決手続き利用促進法(ADR法)に基づく民間ADR事業者の認証を受けた。29日に開いた第10回の定時総会で正式に報告した。2009年の検討開始から9年。ようやく悲願の認証が実現した。
 認証取得で日管連は民間の認証ADR事業者として、管理運営などのトラブルについて当事者間の調停・あっせんといった、和解の仲介を行う。調停に加え、裁判などの一般的な法的手続きと異なり、実務経験が豊富なマンション管理士という「専門家」が間に入る点が最大の特徴で、紛争を解決に導く上での強みだ。
 認証に先立ち、日管連ではADRを実施する専門家としての研修と適性試験を実施。6月30日時点で会員管理士会所属管理士80人が実施予定者に名乗りを上げている。
 実際の業務は日管連内に設置した「マンション紛争解決センター」(重森一郎センター長)が手掛ける。
 認証ADR事業者の紹介などを行う「かいけつサポート」ホームページによれば、同センターが扱う紛争の分野は「マンションの管理に関する紛争」。種類・範囲は、管理組合管理部分の保安・保全・保守・修繕・変更・運営・清掃・消毒・ごみ処理、修繕積立金の運用など全13項目(表参照)。
 管理組合や区分所有者らが制度を利用して紛争を解決したい場合、申込者が申し込み手数料3万円、期日費用として1期日につき当事者双方がそれぞれ5000円を負担。合意が成立した場合は1万円を負担する。相手方がADRの手続きに合意するのが条件で、合意がない場合は手続きは行えない。
 裁判外紛争解決手続き(ADR)は、民事上の紛争を、当事者と利害関係がない専門知識を持つ第三者が双方の主張を吟味し、和解による解決を図る。07年に施行されたADR法では、ADRを行う民間事業者を法相が認証する仕組みが設けられた。認証を受けるには法が定める16項目の基準に適合するほか、業務を行うに際しての必要な知識や能力、経済的な基礎があるかどうかなども問われる。
 8月30日までに、157業者が認証を受け、うち152事業者が活動を行っている。マンション管理関係では08年12月、NPO法人福岡マンション管理組合連合会が認証を取得している。
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 日管連がADR法に基づく認証取得の検討開始を正式に決めたのは、09年の定時総会だ。検討開始から取得までに9年かかったことになる。
 取得までに時間を要した背景について、関係者は「日管連が全国組織だった点が要因の一つでは」と話す。
 現在認証を受けている事業者は、公益財団法人以外では各地の弁護士会や司法書士会・土地家屋調査士会・社会福祉労務士会などが多く、全国組織の認証は少ない。
 全国組織の場合、地域団体と異なり、基本的に全国が事業対象地になる。この関係者は「このため、適正な業務が実施できるのかチェックが相対的に厳しくなり、審査が長期化した可能性があるのでは」と推測している。

               扱う紛争分野と種類・範囲
          
○マンションの管理に関する紛争
(1)組合管理部分の保安、保全、保守、修繕、変更、運営、清掃、消毒およびごみ処理
(2)マンション管理適正化法第103条に定める、宅地建物取引業者から交付を受けた設計図書の管理
(3)組合管理部分に係る火災保険その他の損害保険に関する業務
(4)マンションの長期修繕計画の作成または変更及び長期修繕計画書の管理に関する業務
(5)マンションの修繕等の管理に関する履歴情報の整理および管理
(6)区分所有者が管理する専用使用部分について、管理組合が関与することが適当であると認められる管理行為
(7)マンションの修繕積立金の運用
(8)マンションに関連する官公署、町内会等との渉外業務
(9)マンションおよび周辺の風紀秩序および安全の維持、防災ならびに居住環境の維持および向上に関する業務
(10)マンションに関連する広報および連絡業務
(11)建物の建て替えに係る合意形成に必要となる事項の調査に関する業務
(12)管理組合の解散時における残余財産の清算業務
(13)その他建物ならびにその敷地および付属施設の管理に関する業務

以上、マンション管理新聞第1081号より、抜粋。

以下、日管連主催「ADR実施者養成研修テキスト」より。

 裁判外紛争解決制度(ADR)とは
 ADRとは、民事上の紛争を、当事者として利害関係のない公正中立な第三者が、当事者双方の言い分をじっくり聞きながら、専門家としての知見を生かして、柔軟な和解解決を図るものです。(かいけつサポートHPより)
 英語では、「Alternative Dispute Resolution」(「裁判に代替する紛争解決手段」)といいます。
 ADRは民間機関が行うものであり裁判とは違いますが、民間機関がADR認証を受けると以下の特例的措置が認められます。
<ADRの法的効果>
①ADR認証を受けることによって、紛争解決手続きを報酬を得る目的で業として行うことができる(弁護士法第72条の例外的措置)。
②一定の場合に時効中断が付与される(法第25条)。
③他に訴訟が継続している場合に、一定の要件のもとに訴訟手続きの中止が認められる(法第26条)。

 ADRの種類
 ADRには、「仲裁」「調停」「あっせん」の3種があります。
「仲裁」は、当事者の合意(仲裁合意)に基づいて、仲裁人で構成される仲裁廷が実案の内容を調べた上で判断(仲裁判断)を示し、当事者がこれに従うべきこととなる手段です。
「調停」、「あっせん」とは、当事の間を調停人、あっせん人が中立的な第三者として仲介し、トラブルの解決についての合意ができるように、話し合いや交渉を促進したり、利害を調整したりする手続きです。
「仲裁」は仲裁法に基づき実施されますので、日管連で行うADRは、「調停」「あっせん」といわれるADRです。

 日管連で行うADRとは
 「調停」「あっせん」のADRでもさらに、第三者の関与の違いから「対話促進・調停型」と「指導・裁断型」のADRにわけられます。
 「対話促進・調停型」は、第三者が当事者の話し合いの間で問題点を整理し対話を促進・調整し当事者が自律的自己解決を図ることをサポートし、「指導・裁断型」は、第三者が当事者の話を聞き解決案を提示するものです。
 私たちがかかわるマンション紛争では、紛争解決後も当事者は同じマンションでともに暮らしていくという特徴があります。そのような紛争に対し、「指導・裁断」してしまうと、結果に納得できない当事者にしこりを残してしまい本当の解決にはなりません。しこりが残ると「ともに住む」ことは難しいからです。
 そこで、日管連では「対話促進・調停型」のADRをおこなうことを予定しています。

 「対話促進・調停型」ADRの特徴
① 第三者が「説得」するのではなく、当事者自身が自分たちで納得できる解決策を考える。
② 第三者は当事者の話し合いの場の創設に関与し、当事者の話し合いを促進・支援する。
③ 法律的な解決にこだわらず、当事者の感情・気持ちも考慮しながら、臨機応変解決策を模索する。
という特徴を持ちます。

以上、日管連主催「ADR実施者養成研修テキスト」より抜粋。

 福井英樹マンション管理士は、日管連が定める2日間の「ADR実施者養成研修」の修了後、別途定める当該「ADR実施者適性試験」に合格し、日管連ADR実施者名簿に登録されております。
 従来から、諸々の相談会等で、マンション問題の相談を受けますが、非常に多いのが、区分所有者同志が理事長等派と反理事長等派に分かれ、いがみ合い、分裂している管理組合等からの相談です。
 上記にもあるように、マンション問題においては、紛争解決後も当事者は同じマンション内でともに暮らしていくという特徴があります。民事訴訟手続きのように、当事者間の紛争を裁判所で法律的に強制的に解決するという手続きはマンション問題を解決するには不適切なケースも多々あります。
 今後、マンション管理士による当該日管連の「対話促進・調停型」ADRの需要がますます高まってくるものと確信しております。
 日管連登録のADR実施者として、当該技術と理解力を磨くべく、自己研賛に鋭意努めてまいる所存です。

 


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