石綿が仕上げ塗材に含有?除去作業時の飛散防止対策 大規模修繕工事でも対応必要 環境省が昨年通知 マニュアル作る管理会社も

投稿日:2018年08月31日 作成者:福井英樹 (4247 ヒット)

 大規模修繕工事でも石綿(アスベスト)対応が本格的に迫られそうだ。既に「石綿含有仕上げ塗材使用建物の大規模修繕工事対応マニュアル」を作成、対応に乗り出した管理会社もある。
 労働安全衛生法施行令で2006年9月から石綿含有率0.1%を超える全ての製品の製造が全面禁止となった。
 しかし、それまでの建築物の内外装仕上げに使われた建築用仕上げ塗材には石綿を含有するものがあった。
 含有率は高くないものの、塗膜のひび割れや施工時のダレを防止する目的で石綿、主にクリソタイル(白石綿)が添加材として使用されていた。
 この石綿繊維は合成樹脂やセメント等の結合材によって固められており、仕上げ塗材自体は塗膜が健全な状態では石綿が飛散するものではない。しかし、仕上げ塗材の除去にあたっては、これを破断せずに除去するのは困難で、除去方法によっては飛散の恐れもある。
 そこで、環境省は昨年5月30日付で、建築物等の解体・改造・補修工事における「石綿含有仕上材の除去等作業における石綿飛散防止対策について」(環水大大発第1705301号)を通知している。
 冒頭の管理会社の対応はこの通知を受けての動きだ。
 同通知によれば、吹き付け工法により施工されたことが明らかな場合には大気汚染防止法施行令第3条の3第1号「吹き付け石綿」に該当、大規模修繕工事においても特定粉じん排出等作業の実施の届け出や作業基準の順守等が必要となる。吹き付け工法により施工されたかどうかが明らかでない場合も石綿含有仕上塗材は「吹き付け石綿」として見なす、としている。
 「吹き付け石綿」となれば、大規模修繕工事も仮設方法をはじめ、工事工程は大幅な変更を迫られ、工期の延長、そしてコストの増加も避けられない。
 まずは石綿仕上げ塗材が使用されているかどうか、その仕上げ塗材が吹き付け工法で施工されたのかどうか調査する必要がある。
 竣工図書ではなかなか判明しづらいため、建物診断時での調査が必要となる。
 サンプル(試料)を採取し石綿含有率が0.1%を超えるかどうか分析機関で調べてもらうことになる。
 なお、「建築仕上塗材からの石綿粉じん飛散防止処理」については、16年4月に国立研究開発法人建築研究所、日本建築仕上学会からなる委員会により「飛散防止処理指針」が作成されている。
 実際の除去作業となると水循環式無振動ドリル等を使用し、使用後の石綿含有排水はセメント等で固化して二重に密閉、廃石綿として処理するなど、大掛かりな作業が必要となる。
 一方、14年6月1日からは改正大気汚染防止法が施行され、06年9月1日以前に竣工された建築物等の「解体工事」「改造工事」「補修工事」の元請け業者に対して、石綿含有建材についての事前調査が義務付けられた。
 調査の結果等を文書で発注者に説明し、工事現場で公衆の見やすいように掲示することが義務付けられている。
 石綿含有調査費および石綿除去工事については、一部費用を補助する制度を設けている自治体もあるので確認しておきたい。
 除去工事が必要となれば、大規模修繕工事でコストがかさむことになるだけに、管理組合も「石綿含有建築仕上塗材」の対応について、十分な理解が必要だ。
 管理会社を含めマンションの大規模修繕工事関係者にとって「石綿含有仕上げ塗材」の対応は待ったなしといえそうだ。
以上、マンション管理新聞第1080号記事より抜粋。

 福井英樹も数年前、補助参加人として参画した某マンション(竣工1977年)の大規模修繕工事の際に、施工監理会社から、理事会に対して、廊下側の手摺のケイカル板ならびにベランダ側の仕切り板に石綿が含有されているとの報告があり、当該個所の多くの箇所がひび割れていたため、同会社から、当該個所を「封じ込め施工」をするか、もしくは、ケイカル板ならびに仕切り板の全てを撤去して「新調」するかの提案がなされました。
 理事会としては、全撤去となると、膨大な費用になるとのことで、「封じ込め」の方向性で合意が形成されていましたが、同修繕委員会に時期を遅れて参画した福井英樹は「新調」を敢えて提案し、最終的には皆さまの合意を得るに至りました。
 というのも、上記の記事にもあるように、塗膜が健全な状態であるなら、石綿が飛散することはないのですが、今後30年以内に、南海トラフ大地震等が70~80%の確率で発生します。この確率は今現在も含めての確立です。直下型と海溝型を兼ね備えた大地震となります。海から離れているから、津波の心配がないので、安心ではなく、ものすごい揺れが想定されます。
 阪神や東北の大震災でも、ベランダ側の仕切り板や手摺下ケイカル板が無残にも破壊された数多くの被災マンションの実例をみてきました。
 当然のことながら、当該破断個所から、石綿が飛散します。
 当該マンションが被災し、同じような状況になった場合、各区分所有者から、当時の理事会や修繕委員会に対して、責任追及されるのは確実です。最悪、損害賠償の可能性さえあります。
 ある専門家はそういう状況下でも、石綿肺を発症する確率は非常に低いので、過剰な心配は不要と豪語される方もおられますが、「発症する」「発症しない」の問題ではなく、風評被害が問題なのです。マスコミで、アスベストの問題を大きく取り上げていて、訴訟問題も取り上げられています。一般には、石綿を吸ったら、必ず、発症すると信じられています。
 当時の施工監理者から、石綿全撤去の提案を受けていながら、「予算の関係上、より大事な安全管理、ひいては人命をないがしろにしていた。」等と追求され、批判されるのは必定です。
 また、それ以前の問題としても、全面撤去により、宅建取引上の重要事項説明項目である「石綿含有」の告知をする必要もなくなり、資産価値でも優位となります。 
 最終的には、全面撤去の上、全ての新調工事を実施し、現在でも、各理事様、各区分所有者様より、賞賛のお声を頂戴しており、喜ばしく存じております。
 他の高経年マンションでも大きな確率で石綿が含有されていることが推測されます。
それ以後も、高経年マンションの管理組合理事様等からの相談を受けた場合、当該方針を貫いています。
 


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