戸当たり工事費「75万~100万円」が30% 大規模修繕で初の実態調査 国交省
国土交通省は5月11日、「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」結果を発表した。管理組合の利益と相反する立場に立つ「不適切コンサルタント」問題を踏まえ、大規模修繕工事の設計・監理業務を受託する設計コンサル業者を対象に、業務の内容や業務量などを尋ねた。結果からはコンサル業務内容別・工事金額別にみた業務時間なども明らかになっており、同省は「設計コンサルや施工会社から提出される見積もり内容と調査結果とを比較して事前に検討することにより、適正な工事発注などへの活用ができる」としている。
調査は昨年5月から7月にかけて実施。大規模修繕の工事の内訳や設計コンサル業務従事者の業務量などについて尋ねている。直近3年間に受注した大規模修繕に関する設計コンサル業務の実績がある企業2352社にアンケートを郵送し、134社から944サンプル分の回答を得た(回収率5.7%)。
同省は「工事内訳に過剰な工事項目・仕様の設定などがないか」「戸当たり・床面積当たりの工事金額が割高となっていないか」「設計コンサルの業務量、特に工事監理における業務量が著しく抑えられていないか」などといった点を事前検討する際に有効だとしている。
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設計コンサル業務の内訳は、業務量のウエートから見ると「工事監理」が40.3%で最も多い。「設計」が31.8%、「調査・診断」が15.2%で続く。工事回数別にみても1回目、2回目、3回目以上でトップ3に違いはなかった。
コンサル業務量は「100人×1時間~200人×1時間」が最多の31.1%。工事回数3回目以上では「~100人×1時間」が33.3%で最も多くなり、1回目、2回目で最多だった「100人×1時間~200人×1時間」は18.4%に減少している。
業務実施時間は「1年~1年半」が29.5%を占め最多。業務内訳別にみると、「調査・診断」に係る実施時間は「1カ月~3カ月」が45.9%、「設計」、「施工会社選定協力」、「工事監理」は「3カ月~半年」がそれぞれ42.6%、46.8%、61.5%で最も多く、「長期修繕計画の見直し」は35.2%で「1カ月~3カ月」が最多だった。
工事金額別にみたコンサル業務量はマンションの個別性によるばらつきはあるものの、同省では「工事金額が増加するにつれ業務量も増加する傾向が見られる」と指摘する。
得られたサンプルが最も多かった工事費「2000~4000万円」の工事では「100人×1時間~200人×1時間」の割合が最多の36.6%。
戸数別に見たコンサル業務量でも最もサンプルの多かった「31~50戸」の場合、「100人×1時間~200人×1時間」が最多の39.3%。床面積別にみても、最もサンプル数の多い「2000平方メートル~4000平方メートル」では、同回答が35.4%で最多。
業務内訳別に見たコンサル業務量は、200~4000万円の工事の場合、「調査・診断」では「~25人×1時間」が53.7%で最多。「設計」では「25人×1時間~50人×1時間」(43.8%)、「施工会社選定協力」では「~25人×1時間」(71.2%)、「工事監理」では「25人×1時間~50人×1時間」(39.7%)、「長計の見直し」では「~25人×1時間」(55.9%)がそれぞれ最も多かった。2000万円までの工事における「長計の見直し」では「75人×1時間~100人×1時間」が68.8%。
大規模修繕について、工事金額の内訳は「仮設工事」(19.2%)、「外壁塗装」(17.3%)、「床防水」(11.5%)の順。工事回数別では1回目、2回目までトップ3は変わらないが、3回目以上では「建具・金物等」(11.6%)が3位。工事金額は「2000万円~4000万円」が最多の27.0%。
戸当たり工事費は「75万円~100万円」が30.6%で最多。「100万円~125万円」が24.7%で続く。工事回数別では1回目、2回目までは「75万円~100万円」が最も多いが、3回目以上では「50万~75万円」が最多(24.6%)。(グラフ、表省略)
以上、マンション管理新聞第1071号より。