自主管理の先行き懸念 「役員一人」慣習改め4人に 「グレデンス甲東園」築50年 9戸 兵庫県西宮市 管理計画 認定マンションを訪ねて
昨年9月10日、兵庫県西宮市で第8号となる管理計画認定を取得した「グレデンス甲東園」(築50年、9戸)。自主管理を長く続けている。
認定取得は考えていなかったが、管理組合理事長の谷健三さん(61)によれば、前々理事長が自主管理の先行きを心配して、「分譲マンション管理アドバイザー派遣事業」の利用を提案したことが申請のきっかけになった。
管理規約はA4用紙裏表の1枚のみ。長期修繕計画はなく、貸借対照表や収支計算書も作られていなかった。
「入居者が高齢で『何をするにも不安』という話が出て、やっぱりプロの人がいないときついという話になり」(谷さん)、昨年1月、派遣事業を利用しマンション管理士の内藤義弘さんに相談。その後個別に業務を依頼することにした。
長期修繕計画未作成、修繕積立金の根拠も「なかった」(谷さん)という状況だったが、内藤さんが標準様式に準拠した30年間の長計を作成した結果、現在の金額でも管理計画認定基準に定められた額をクリアしていることが分かり認定取得を提案した。
「グレデンス-」は当初から修繕積立金が高めに設定されていたようだ。エレベーターや機械式駐車場といった設備がないため、大規模修繕の費用を賄えてきたと考えられる。
昨年8月の通常総会で認定申請や長計を決議。申請に先立ち昨年5月、臨時総会で管理規約を改正した。管理規約は入居時の1975年当時のままで、内容を知らない区分所有者もいたようだ。
このため役員選出については、規定とは異なる運用が長年使われてきた。
理事会や役員任期などを定める、規約に基づき設定された「管理組合規定」では役員4人・任期1年で運営する決まりだったが、いつのころからか役員は理事長1人のみで任期は2年、または会計と理事長、理事長が会計を兼任、など「慣習」で運営が行われてきた。
改正に際しては理事会や役員等に関する規定を規約本体に組み込むなどし、基準を満たせるよう標準管理規約に準拠させた。
役員数や役職、任期は規約を順守していくことにした形だ。
会計に任期は「慣習」時代の「半年交代」を採用したため、役員は総勢延べ5人。
「理事長1人」と比べると大違いだ。実質的に役員数が増え、運営面ではプラスの効果が見込めるが、小所帯のため2年に一度は役員の順番が回ってくる。
「慣習」で廻していたときと比べると住民の負担は重くなるが「やらないと仕方がないと思っています。それはお互い様です。戸数が少ないので皆さんもしないとあかんと思っていると思います」(谷さん)
実際の運用は外部区分所有者を除く居住区分所有者8人で回す。
「どういうふうに回していくのか、再任があった場合はどうやっていくか、しかるべき順番が固まっていないので話し合わないといけないと思っています」と谷さん。
現在の副理事長が次年度理事長に就任することにしたが、居住区分所有者の転居などで「純然たる順番が乱れている事情があるので順番がまだ決まっていないんです」と話している。
今後の課題は年内実施に向け計画中の4回目の大規模修繕。工事内容の方向性を検討しているという。
「9戸しかありませんが、その折り合いをつけるのが一番の課題。できたら満場一致にしたい。5対4になり5の方をとることはなかなかできない難しさがある」(谷さん)がこれまでそうした局面になったことはなく合意形成を図っている。
以上、マンション管理新聞第1296号より