予防対策、『特別の影響』に該当 「コロナ」理由に専有部修繕不承認 組合側の異議認めず 8/16 大阪地裁決定

投稿日:2021年08月29日 作成者:福井英樹 (1508 ヒット)

新型コロナウイルス感染症予防対策を理由に専有部リフォームの申請を受理しない方針を設けた管理組合に対し、リフォームを申請した法人区分所有者が工事実施の承諾を求めた仮処分事件で大阪地裁は8月16日、管理組合の異議申し立てを認めず、7月14日付けの仮処分決定を認可する決定をした。能宗美和裁判官は「理事会決議による工事申請の不受理方針は無効」などとする一方、管理組合が取ったコロナ対策は「実効性の高い感染対策であるとは認められない」と言及している(2021年7月25日付・第1177号に関係記事)。

決定文によれば、専有部の修繕等に関する細則そのもは、管理規約に反しない場合は「正当な理由がない限り、その工事の許可をしなければならないと定められている」と認定。

細則は総会決議を得ている点から「理事長の単独の決定または理事会の決議により、細則を変更することはできない」として、2020年5月の「理事会による本件予防対策の決定は無効である」と判断した。

管理組合側は、仮処分を求めた法人区分所有者の宅建業者が、住戸取得に際し「管理に係わる重要事項調査報告書などでリフォームの制限を認識していた」と主張したが「理事会の決議による工事の申請の不受理方針は無効であるから、主張はその前提を欠く」と退けられている。

管理組合が取った感染対策については「感染を予防する目的自体は一定の合理性を有する」と支持した。

ただ、対策として管理組合が示した「指定業者以外の工事関係者によるマンションへの立ち入り制限」については疑問を投げ掛けた。

まず、このマンションは開放廊下型のため「密閉空間となる可能性があるのはエレベーターや建物玄関部分」とし、そうした場所で工事業者と居住者が「すれ違ったり乗り合わせたりすることが感染のリスクの高い行為であるとの疎明はない」と指摘した。

業者の立ち入り制限 実効性に疑義も

一部の工事業者の簡易な施工や配送業者の簡易な施工や配送業者等に対しては、立ち入りを制限していない点にも言及し「理事会の指定業者以外の内装施工業者の立ち入りのみを制限することが実効性の高い感染対策であるとは認められない」と結論づけている。

予防対策の継続を決めた今年6月の臨時総会決議については区分所有法31条1項後段の「特別の影響」に照らし、リフォームする「『一部の区分所有者の権利』に影響するものである」と指摘。

対策は「工期が長期間に及び、かつ不特定多数の出入りが予測される大規模な専有部分改修工事」申請を「政府より新型コロナ終息等の発令が行われるまで」は受理しない、と不明確な基準で長期間「権利を著しく制約する」と認定。「社会通念上、受忍すべき限度を超えるものといえ、債権者の承諾のない本件総会決議が有効になるとはいえない」と判断した。

管理組合側は、臨時総会は「従来の取り扱いに変更を加えるものではなかった。議案に係る対象者は全区分所有者であり、一部の区分所有者を対象とするものではなかった」とし、議案は「適法に承認された」と反論していた。

既に締結された住戸の売買契約が申請不受理に伴う工期遅延で解除されるなどの不利益を被る可能性があり「保全の必要性も認められる」と判断。

宅建業者の申し立てを認めた7月の「原決定は相当である」と結論づけた。

以上、マンション管理新聞第1179(2021年8月15・25日合併号)号より。


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