都市部マンション高騰続く 供給減・大手寡占 共働き増・低金利
都市部でマンションの価格の高騰が続いている。2020年の首都圏の新築マンション発売価格は、バブル期以来の高値水準をつけた。テレワークの普及で東京への一極集中は和らいでいるが、発売戸数の減少や高所得の共働き世帯の増加などを背景に、高い人気を保っている。
バブル以来
1月末、不動産会社オープンハウスが東京・飯田橋で開いたマンション相談会には、多くの家族連れが訪れていた。東京都文京区内の物件を検討している30歳代の会社員夫婦は「予算は1億円弱。駅に近くて価格の下がらないものが欲しい」と話した。
野村不動産が手がける東京・東池袋のタワーマンションは全約250戸のうち昨秋に売り出した第1期の115戸が即日完売した。
販売価格の平均は1.1億に上る。購入者の半数は会社員で、多くが夫婦共働きだという。
不動産経済研究所によると、20年の首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)の新築マンション発売価格は平均6083万円で、バブル期の1990年以来、30年ぶりに6000万円台となった。近畿圏(大阪、兵庫、京都、奈良、滋賀、和歌山)でも4181万円で、3年連続で上昇した。
国土交通省が発表している不動産価格指数によると、現在の全国のマンションの平均取引価格は10年前の1.5倍となった。一方、郊外や地方での販売が多い戸建て住宅の価格はほぼ横ばいで、その差は鮮明になっている。
転出増でも
コロナ禍でテレワークが普及したことなどを背景に、東京都の転出者は転入者を上回るなど、郊外や地方に住居を求める動きも出ている。それでも都市部のマンション価格が高騰を続けるのは、複数の理由がある。
まず、供給不足だ。首都圏マンションの供給戸数は2000年の約9.5万戸をピークに減少し、近年は3万戸台。コロナ禍で不動産会社の営業が一時停止した20年は約2.7万戸だった。コロナ前は訪日外国人客の増加で「ホテルと土地の争奪になり、用地確保が難しかった」(大手不動産)という。
不動産大手の寡占化も背景にある。住友不動産、野村不動産、三菱地所、三井不動産、東急不動産、大京、東京建物は「メジャーセブン」と呼ばれ、発売戸数全体に占める割合は5割弱。08年のリーマン・ショック前は3割弱だったが、中小住宅販売会社の破綻が相次ぎ、シェア(占有率)が高まった。大手はブランド価値を重視し、販売が不調でもあまり値下げをしない傾向がある。
ペアローン
購入者側の事情も大きい。リクルート住まいカンパニーの調査によると、首都圏の新築マンション購入者のういち共働き世帯が6割を占める。会社がテレワークを導入しても週に一回程度は出社が求められるなど、完全な在宅勤務が可能な企業は少ない。職場へのアクセスの良い都市部の魅力は薄れていない。
夫婦ともに正社員で世帯年収が1000万円を超える「パワーカップル」も増えている。日本銀行による大規模な金融緩和で金利が低く抑えれれており、住宅ローンも組みやすい。夫婦それぞれがローンを組む「ペアローン」の利用も広がっているという。
みずほ総合研究所の宮嶋貴之氏は「首都圏での移住が中心で、働く人全員がリモートワークを行うことは現実的ではない。利便性の高い都市部のマンション価格はそれほど下がらない」と、当面は価格が高止まりすると見ている。
新築マンションが好調なのは、中古が高値で売れることも背景にある。不動産調査会社「東京カンテイ」によると、19年に築10年を迎えた首都圏マンションのうち3割のエリアで、新築時より価格が上昇した。
ただ、不動産コンサルタントの長嶋修氏は「都心の物件に人気が集中して平均価格が上がっているが、大きく下落した物件や、取引すらされないものもある」と物件間の格差を指摘する。
さらに、不動産の価値を保つには、立地や間取りのほか、管理状態も重要だ。
資産価値に影響 購入時参考に
適切に管理が行われなければ、買い手や借り手がつかず、老朽化だけが進む。
マンションの管理状況を改善するため、国交省は20年に「マンション管理適正化法」を改正した。22年度から順次、地方自治体が管理状態の悪いマンションを指導できるようになる。
業界団体では基準作りが進む。マンション管理業協会は改正法の施行に合わせて、マンションの管理状況を公開するデータベースを作る予定だ。排水管の清掃状況や修繕計画の内容、修繕積立金の総額などを評価してランク(Sランク、Aランク、Bランク)付けし、購入検討者が閲覧できるようにする。
同協会業務部の前島英輝次長は「管理のよしあしはマンションの資産価値に影響する。今後は管理の質が、客観的に市場で評価されるようになる」と話している。
以上、読売新聞 2021年2月8日付け号より。