新型コロナ感染拡大・現況は ウエブで『居住者説明会』大規模修繕 専業9社の対応
新型コロナウイルス対応の特別措置法に基づく緊急事態宣言発令に伴う、マンションの大規模修繕工事における対応などを一般社団法人マンション計画修繕施工協会(MKS)の会員で改修元請け工事高上位10社(今年2月10日時点)に聞いてみた。回答が得られた9社では管理組合の意向に沿った対応を施しているようだ。
工事中の物件で中断や続行といった基本的な対応を訪ねた。
建装工業(本社東京)は、安全を確保する工事を除いて「いったん工事を中断して状況を確認の上、お客さまと工事再開の可否について協議を行う」としている。
再開時期の見通しについて同社は、政府や自治体などの動向を踏まえ、管理組合・管理会社・設計コンサルと協議して判断する、としている。
ヨコソー(本社神奈川)は、7都道府県に宣言が発令された4月7日付でホームページに「休工」または「各工程の区切りまで施工し安全確保を確認して工事を休工」のお願いを打ち出している。いずれも管理組合などに報告・相談した上で休工の最終決定は理事会の判断による。
休工を求めるお願いも 管理組合の意向を優先
宣言発令後の8日から随時休工を開始し宣言期間の5月6日までを予定。再開は行政の動向を判断し管理組合の承認後としている。
休工の準備として休工説明の各戸への文書配布のほか、休工する場合は、共通仮設の閉所、足場の点検実施や施錠などの対応を挙げている。
下請けの場合は、元請けの指示に従うとしている。
同社によれば、同社が元請け・下請けを含めて「6割方は休工に入っている」。工事続行を要請する管理組合もあり、そうした物件では引き続き工事をしている。
カシワバラコーポレーション(本社東京)も、管理組合の意向に沿う方針。「今のところ中断した物件はなく、全現場継続している」という。土日・祝日は、管理組合と相談して「できれば原則休工にさせていただく対応をしている」。
富士紡(本社神奈川)は、宣言発令に伴い緊急対策本部を設置。情報収集や現場の現状把握、協力会社を含む作業員や社員への指示などを一体化している。管理組合に確認を取った上で、在宅を伴う工事を除き遂行している物件が多いという。土日・祝日は完全休工。
管理組合の意向で小野工建(本社大阪)も工事中の物件では「続行されている」という。三和建装(本社東京)は「弊社に受注している物件では継続の方が多い」、TOHO(本社同)も「工事を進めてほしいというところが多い」とそれぞれ教えてくれた。
シンヨー(本社神奈川)も「元請けの場合は管理組合様に確認してやってほしいということであればやる」、大和(本社同)「やめてくれということでない限りは言うことでない限りは続行」の対応を取っている。
工事を続行している物件では、作業員のマスク着用や手洗い・アルコール消毒、検温など各社が感染防止対策を実施。
具体的な施工箇所では、玄関扉枠の塗装などを協議して延期する対応や「サッシの交換はどうするか協議するつもりでいる」(小野工建)と、大規模修繕特有の課題もある。
建装工業は、玄関扉等は「協議により行程変更」としている、TOHOは専有部分の設備工事について「打ち合わせの結果、長い時間部屋の中に入るので止めている」という。
居住者向け工事説明会を屋外で実施したケースも。今年10月までに工事会社への支払いが完了しないと補助金が出ない国のリフォーム推進事業を利用することもあり、工事説明会を「外で席を離すといった工夫をしてされた管理組合様もいる」(富士紡)。
一方、建装工業ではウエブやDVD等による「非接触環境での説明会を開催している」としている。ヨコソーでも今後の対応でウエブの利用の話をしているという。
工事を中断して工期が延びた場合、足場のリース代など追加費用が発生することが考えられる。工事会社か管理組合のどちらかが追加費用分を負担するのかー。
国土交通省建設業課によれば、民間工事で感染者が発生するなどして工事が実施できない場合は「不可抗力に該当すると考えられる」とした上で、追加費用の負担は「個別に協議してほしい」としている。
緊急事態宣言を受けて中断する場合も同等と考えている。
同課は「民間建設工事標準請負契約約款」(甲・乙)の「不可抗力による損害」(甲21条)・「危険負担」(乙14条)の条項に該当するという。
甲21条は「マンション修繕工事請負契約約款」の20条と同様の文言で、発注者・受注者が協議して発注者が負担する旨の内容になっているのが「発注者が100%負担しろと命令しているものではない」(同課)。
MKSの中野谷昌司常務理事は「受注者側が感染して休工、となると受注者が負担なしというのは難しい」と指摘する。工事会社の一部負担になる可能性も「高い」と見る。
以上、マンション管理新聞第1136号より。