再ライニングで給水管延命を NPCパイプライニング協会 高い技術信頼度で施工増加 築39年目で2回目の更生工事 西原グリーンハイツ(720戸 12棟) 22年前にライニング実施

投稿日:2019年10月24日 作成者:福井英樹 (3748 ヒット)

給水管延命工法の中で、管内のさびを研磨剤で除去した後に管内塗装するライニング工事は、広く普及している最もポピュラーな工法といえる。このライニング工法の主流工法団体の一つであるNPCパイプライニング協会によると、さらなる給水管延命のために再度、ライニング工事を実施するマンションが増えている。同協会会員が工事を実施したマンションを訪ねた。

1回目施工に対する高い評価

東京都西東京市の西原グリーンハイツ住宅団地管理組合法人は昨年8月から今年3月にかけて、給水管専有部の再ライニング工事を実施した。

同マンションは1980年築の8階建て12棟・720戸の大型団地。96年にNPCパイプライニング協会(NPS協会)の会員で、現工法元の京浜管鉄工業(本社東京)が、ライニング工事を実施した。採用された工法は建設技術評価制度で評価された「NPC工法」だ。

NPC協会は現在、同工法に加え技術審査証明工法である「NPBⅡ」「NPLⅢ」「NPBラピッド」で給水管延命対策に取り組んでいる。

西原グリーンハイツは2015年度から「住戸内給水・給湯管更新工事に関する検討会」を立ち上げ、18年度の工事実施を目指した。更新と更生をさまざまな方面から検討した。

更新も露出の場合、美観上もさることながら梁部への穴開けによる耐震強度への影響が危惧された。床下配管で更新するとなると、床の一部を剥がしたり室内の物品等の移動による生活支障の大きさや多額の費用が課題となった。

実際、大小なりの室内リフォーム済みの住戸は全世帯の約60%にも達しており、更新で生じる原状復旧が大きな壁となった。

同管理組合法人は同問題と平行して建て替え勉強会もスタートさせた。建て替えを実現させた大型の団地も訪ねた。建て替え中の仮住まいの確保、そして容積率に余裕があり、余剰床の売却で各戸負担がゼロに近かった点等が成功要因で、逆に自分たちの団地建替えの難しさを痛感することとなった。

更新との金額比較、室内リフォーム増への対応難等で決定

多額の費用、室内リフォーム済み住戸の多さ、そして建て替えの難しさ等から総合判断し、再ライニング実施を18年度の通常総会で決定した。なお、給湯管対策は診断結果から先送りとなった。

再ライニング決定の背景には、1回目に実施したライニング工法への高い評価、信頼度を忘れてはならない。1996年に実施して以降22年間、漏水等のトラブル報告が一切なかったためだ。

実際に理事会メンバーが今回の再ライニング工事に際し、現況調査のために、管内状況を確認。「本当にきれいだった」という。

22年間の更生技術でここまで管内品質が維持できるなら、「その後、技術も進歩しているから、安心して更生工事の実施を決定できた」と話す。

施工業者は5社が入札、1回目にライニング工事を実施した京浜管鉄工業に決定した。金額、管理組合との直接契約率、そして他団地のリピート率等から同社に白羽の矢が立った。

再ライニングに採用された工法は「NPBⅡ」だ。独自のピグ方式採用、ピグを往復させて均一な塗膜と平滑な塗膜を形成させる。特にエルボ部分の確実な塗膜形成に大きな特徴を持つ。

同管理組合法人は給水管改修工事を終え、長期修繕計画見直し検討会を発足した。

給水管対策の次回は更新を計画に入れているが、「雑談の中で、技術もさらに進んで、3回目の更生工事もなくはないよね、との話も出た」という。

NPC協会では、再々ライニング、そして給湯管のライニング技術開発もすでに検討を開始している。

ところで、同管理組合法人は今年4月、施工者である京浜管鉄工業に感謝状を授与した。

感謝状には「優秀なる技術と多年の経験をもって、工事を完了されるとともに住民からの諸相談等にもご配慮ご尽力いただきました。心から感謝の意を表します」と書かれている。

感謝状にかかれている「優秀なる技術」こそ、まさにNPC協会が長年の活動(講習会・研究会等)で築いた蓄積のたまもの。「技術の向上、水質の保持等社会の環境改善にさらに貢献していく」と誓う。

以上、マンション管理新聞第1118号より。

約築40年以上のマンションでは、当該マンションのように床下配管の更新工事となります。床の一部を剥がしたり、室内の物品等の移動等による支障の大きさによる心身負担や多額の費用が課題となります。

さらに、室内をリフォーム済みの住戸の原状回復費用等が重なったり、複合用途マンション等では、工事期間の店舗休業が、強いられる場合も多く、現実の問題として、更新工事はできず、当該マンションのように更生工事での改修を実施するのが現実的です。また、更生工事も進化してきており、排水管も含めて当該事例のように再々ライニングを可能にしている業者も出てきています。

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