2回目のインターホン改修 増加 生活異変や緊急時に自動通報 住民の高齢化に寄り添った改修求められる
建物の経年劣化に伴って、2回目のインターホン設備改修を実施するマンションが増えてきた。モニター画面の大型化、カラー映像、留守中の訪問者録画機能などの最新設備機能に加えて、居住者の高齢化対策機能を付加したインターホンに更新する管理組合の動きも顕著になってきた。ズバリ、「もしものとき」の安心・安全機能だ。最近のインターホン設備改修事情を探る。
神奈川県茅ヶ崎市の400戸を超える大型マンションの管理組合は2年前、築32年目にインターホン設備の2回目の改修を終えた。
1回目は築15年目に実施している。一部住民から「声が聞こえない」「解錠ができない」「ノイズが聞こえる」等のトラブル報告があり、大規模マンションだけに、故障が増加する前に改修することで、住民の不安を解消し快適な生活維持を大きな目的に実施した。
新築当時30代だった住民も築30年経つと60代だ。入居当時40~50代だった人は70~80代だ。
2回目のインターホン設備改修に求められたのは来客確認、通話、解錠という基本機能に加え、セキュリティーの向上と高齢者ゆえの「もしものとき」の対策だった。
同マンションにはオートロック機能が設置されていない。マンション居住者以外でも自由に出入りできる。
マンションの防犯対策の基本は「不審者を侵入させない」こと。オートロックのないマンションではインターホンのリニューアルによるセルフガード強化が一番の近道。
そこで、管理組合が選んだのがアイホンの「らくタッチプラス」だった。高齢者に見えやすい業界最大のタッチパネル式の7型サイズの画面を誇る。旧タイプの4型画面と比べると人物や背景もしっかり確認でき、タッチパネルのボタンが人物に重なっても透過して見やすい。
ボタンにもさまざまな工夫がある。よく使う「通話」「解錠」「終了」ボタンは本体に大きく配置するとともに、次に操作するボタンを一つずつ順番に光の点滅で教えてくれる「ナビホタル」機能が付いている。
留守中の自動動画録画機能に加え、薬を飲む時間(朝・昼・夕・夜・寝る前の五つから時間を設定)になるとインターホンが画面とアラーム音で知らせてくれる「お薬ベル」機能も付いた。
同管理組合が注目したのは高齢住民の「もしものとき」の機能だった。
同社の「らくタッチプラス」には生活異変(センサーが住民の動きを一定時間感知できない場合)を居室の親機、そして管理室親機に自動通報する機能が搭載されている。管理会社による住民の見守りサービスにもなる。
また、オプションだが、緊急時にペンダント式非常ボタンを押すと管理室への通報に合わせ、あらかじめ登録された外線番号へ連絡する通報システムも組み込まれている。
同社の横浜リニューアル営業所では「ここ2~3年はリニューアル全体の5%は2回目の設備改修工事となっている」(伊原正博所長)という。
ちなみに、マンション用インターホンメーカーの補修用機能部品(機器の機能を維持するために必要な部品や基板)の保有期間は生産終了後約7年だ。
インターホン設備が15年以上たつと故障した場合には修理できなくなる可能性も高まるだけに、早めの対策が願われるところだ。
国土交通省が発表した2018年末のマンションストック調査によれば築30年以上40年未満は約116.4万戸、築40年以上は81.4万戸。
2回目のインターホン改修時期を迎えるマンションは今後、増加の一途をたどるだけに、住民の高齢化対策機能の充実がよりもとめられよう。
各物件に最も適したインターホン改修 プログレス アイホン・パナソニック両社の提案・施工
インターホン市場はアイホンとパナソニックの2社でほぼ席巻する。2社は指定工事店を傘下に持っているが、プログレス(本社埼玉県新座市、菊原悦夫社長)は、このライバル会社2件の指定工事店で活躍する、極めて珍しい会社である。
つまり、アイホン、パナソニック両社の製品の営業提案、施工ができ、各マンションの現状に最も適したリニューアル提案が可能となっている。
例えば、アイホン製の通話型玄関子機のリニューアルのケース。アイホンなら既存の玄関化粧パネルの流用が可能。パナソニックだと大きさが変わるため化粧パネルの制作が必要で、価格も割り増しに。逆にパナソニックからアイホンへの交換も同じことがいえる。
片方だけの提案だけでなく、アイホン、パナソニック両社製の提案ができるのが同社の強みだ。しかも、化粧パネルの設計・制作を自社で手掛けている。パネルが経年劣化による色落ちや変形などで交換が必要な場合、あるいはイメージを一新したいといった要望に対しても十分に対応できる体制が整っている。インターホン設備に対する一貫体制が、業界で確固たる地位を築いている理由ともいえよう。
以上、マンション管理新聞第第1108号より。