共用・専有部分向け各種サービス 電力小売り 全面自由化から約3年 非常用発電機導入提案も 災害時の停電対策 電気料金削減分充当で
電力小売りの全面自由化から4月で3年を迎える。新電力では割安な電気料金プランに加え「防災」を切り口にした新たな提案を始めようとする事業者もある。一方、既存マンションで導入が鈍化しているとされる高圧一括受電では、受変電設備の改修時期を迎える高圧の高経年マンションが検討するケースもある。電気料金削減手法として代表的な主開閉器契約への変更では、契約変更に伴い設置する電子ブレーカーの更新も出てきているようだ。
割安な料金プランで実績を上げている新電力の関西エネルギーパワー(本社大阪)。
今年2月9日時点のマンションでの実績は、高圧契約向けの基本料金を削減するプランは197棟、従量電灯の電気料金と動力の基本料金を削減する低圧契約向けでは賃貸を含め672棟、共用部分で同社のプランを契約している専有部向けの削減プラン「マンション専有プラス」は525戸が、それぞれ契約している。
昨年7月に関西電力が電気料金を値下げしたが、基本料金は変更していないため「影響はない。弊社の方が十分安い」と自信をみせる。
同社は、こうした電力の小売りだけではなく「防災」の側面から、管理組合に対してマンションが停電しても電灯や動力設備を動かせる非常用発電機の設置の提案をしていく方針だ。
大阪北部地震が契機に
最大震度6弱を記録した昨年6月の大阪北部地震や9月の台風21号では、停電に伴いエレベーターの停止や、高架水槽を設置していないマンションで加圧式ポンプが停止して、断水したマンションも少なくない。こうした被害を踏まえて、自然災害が発生し停電した場合の対策を考えるマンションから引き合いがあるという。
同社は「既存電力会社の送電設備がやられると、現状では停電してしまうとしか言えないが、それを前面に出して電気を供給するだけではなくて、新電力会社として停電時に困らない防災に踏み込んだ提案ができる会社でありたい」と力を込める。
同社は、もともとIH化や幹線工事を手掛けている。そうした「工事会社」としての強みを活かして、提案に力を入れていく。
調査や見積もりは無料だ。非常用発電機で「共用の設備を全て賄えるようにするのかどうかも含めてニーズに合わせてやっていきたい」と話す。
新電力として提供している電力の削減分で、非常用発電機の導入費用などを「軽減できるような形のエネルギーマネジメントにも努力していきたい」としている。
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高圧一括受電 設備改修控える高軽年で需要も
一方、昨年10月に東京ガスの供給エリヤで自社の高圧一括受電サービスを導入しているマンション向けに7%の都市ガスの割引サービスを始めたエフビットコミュニケーションズ(本社京都・東京)。
同社によれば、既存分譲マンションでは400世帯ほどが加入している。
2棟の新築マンション(約100戸)では9割で申し込みがあるといい、「反応がいい」と手応えを感じている。今後、名古屋や関西にもエリアを拡大して展開する予定だ。
電力小売りの全面自由化から3年近くたち、同社の高圧一括受電サービスでは、九州で自由化の影響が出始めているが、新築を含め14棟で導入が進む。
名古屋では既存に比べて新築マンションの案件が多く、関西では「削減率を冷静に判断すると、一括受電の方がメリットが大きいという結論に至る管理組合もいる」という。
東京では、受変電設備の改修を迎える築30年超の高圧の大規模マンションで検討している案件が出てきている。同社は「一括受電にすることで弊社の用意する設備になるため、メンテナンスや改修の費用を考えなくていいというメリットがある」としている。全員の同意書が集まるまでの間は、新電力でもある同社の専有部の割引プランに加入してもらい削減する「つなぎ」も可能にしている。
既存の導入済みマンションについては、今後3年以内にスマートメーターへの切り替えも行う計画だ。
電力の削減手法として負荷設備契約から主開閉器契約への変更で実績のある「M’sライフサービス」(本社東京)。
同社によれば、電力自由化で様子を見ていた管理組合からの需要がある一方、同契約への契約変更に伴い設置する電子ブレーカーの交換時期10年がたち、ブレーカーを交換するマンションも出てきている。
他社が導入した案件から依頼もあり、「導入時から設備が減設されているのに、契約容量がそのままになっているケースもある」と指摘する。
更新に当たっては「契約内容が10年前と同じなのかどうか、きちんと管理組合として把握することが大事だ」という。
一方、LEDでは、3~4年前に電球だけLED化していたマンションで、球が放熱できず、点灯しないケースが出てきており、「たまたま器具と球の相性がよかったので付けられていたものだ。そういうケースで、器具ごと交換に踏み切る管理組合も出てきている」と指摘している。
負荷設備契約から主開閉器契約への契約変更
負荷設備契約
通常、低圧電力の契約では、エレベーターや
機械式駐車場、揚水ポンプなどの動力機器が
ある場合、その動力が全部稼働したときの電
気容量の合計値を基準として契約容量を設定
しており、契約容量が大きければ基本料金は
高くなる
↓
主開閉器契約
動力機器の実際の稼働状況を基準に契約容量
を決める。契約容量を下げることで基本料金
を削減する。主開閉器契約への変更に伴い設
置するのが電子ブレーカー
以上、マンション管理新聞第1097号より。