60日間の業務停止命令 元社員が着服 大京アステージ 国交省中部地方整備局 / 保証契約未締結・印鑑所持 三和ホーム 国交省北陸地方整備局
国土交通省中部地方整備局は12月26日、大京アステージ(本社東京、三宅恒治社長)に対してマンション管理適正化法に基づく業務停止命令と指示処分を行ったと発表した。処分理由は元従業員が複数の管理組合における保管口座の印鑑を所持し、組合の資金を不正に支出していた点。同社は2009年にも元社員数人による着服で関東地方整備局から指示処分を受けており、今回で監督処分は2度目となる。
業務停止は1月18日から3月18日までの60日間。同社名古屋支店と同整備局の管内で新規契約の締結などが禁止される。
同整備局によれば、同社の自主申告で判明した。現在は是正されている。
大京広報は違反や着服があった管理組合数、着服の手口や期間、被害総額など「具体的な内容については管理組合様のご意向もあって差し控えたい」とし、元従業員の勤務地や職種なども「控えさせていただいている」としている。
違反や着服行為は昨年2月に大京アステージの社内調査で発覚した。管理組合に報告や謝罪をした上で、被害額を全額弁済したという。元従業員は行為を認めており、懲戒解雇されている。着服した金は同社に弁済した。
管理組合の意向を受けて同社が刑事告発したが、受理されなかったという。
監督処分基準では保管口座の印鑑の保管は業務停止30日だが、管理組合の財産に損害が発生しているため60日を適用している。
同社は09年8月に沖縄支店(旧沖縄大京)の元社員と、埼玉、神奈川、静岡県の元社員3人による管理組合財産の着服で関東地方整備局から指示処分を受けている(09年9月5日付第784号)。
大京広報によれば、当時、旧沖縄大京の吸収合併に伴う会計システムの統合とともに、社内体制の整備や事務管理業務のけん制機能の強化などを打ち出していた。
だが「当時の再発防止策や通常行っているコンプライアンスに関する研修、社内の体制的な部分が結局機能していなかったということで非常に重く受け止めている」としている。
今回の処分を受けて、大京アステージでは日常業務のチェック体制の見直しや業務フローの改定、定期的な従業員向けのコンプライアンスのテストの実施などに取り組む方針だ。
「同じようなことを繰り返さないために防止策を徹底していくことを考えている」という。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 国土交通省北陸地方整備局は12月25日、三和ホーム(本社石川、村上力三社長)に対してマンション管理適正化法に基づく業務停止命令と指示処分を行った、と発表した。2001年の同法施行以降、同整備局の監督処分は初めて。
業務停止は1月17日から3月17日までの60日間。新規契約の締結などが禁止される。
処分理由は①同一条件の契約更新で全区分所有者等と管理者等への重要事項記載書面の未交付と管理業務主任者による重要事項説明の未実施②同一条件の契約更新で管理者等への契約成立時の書面の未交付③「イ」方式の複数の管理組合で保管口座への移し換えの未実施④収納口座の印鑑保管に伴う保証契約の未締結⑤保管口座の印鑑保管⑥複数の管理組合で管理者等への会計収支書面の未交付⑦複数の管理組合で不十分な内容の管理事務報告書の交付と1管理組合での報告の遅滞。
同整備局によれば、違反がわかったのは16年。外部から通報があった。現在、違反は是正されている。
同社によれば、具体的な管理組合数や現在の受託組合数などは「差し控えたい」とする。
③の違反については「定額を移し換えてはいたが不十分だった」とする。違反期間は最長で08年頃から違反が発覚するまでの約8年間に及ぶという。
④は「当時の理事長が体調不良で一時的にお預かりしてしまった。そのときに保証契約を締結しなくてはいけなかったが失念していた」とする。
監督処分基準では、①②以外は業務停止で⑥の7日を除いて③④⑤⑦はそれぞれ30日。
業務停止処分の対象となる複数の違反がある場合、最も長期の業務停止期間×2と各違反行為に対する業務停止の合計日数のいずれか低い方が適用されるため、今回のケースでは30日×2と127日で短期の60日となっている。
同社は02年5月に管理業者登録。12年度の登録更新の際の登録簿では6組合・450戸を受託していた。
以上、マンション管理新聞第1093号より。
上記ニュースのように、管理組合財産の不正流用が後を絶ちません。多くの場合、特定の区分所有者や管理会社フロント担当者が現金を自由に取り扱いできる環境にある、いわゆる丸投げ状態の場合に生じやすく、また、少額な金額を引出してまた戻すというような行為の場合は、決算時点では預金が毀損されていない状態のため残高証明書との照合だけでは発見できません。
一定期間の通帳の入出金記録と会計帳簿の照合を行い、通帳の入出金記録がすべて会計帳簿に記録されているかを確認する等の必要があり、会計帳簿に記録されていない取引があった場合は、管理会社フロント担当者に合理的な理由の有無を追求することが必要です。
しかしながら、このような現金預金の不正流用の対応策を素人の区分所有者のみで行うことは現実的ではありません。従って、通常は、信頼の置ける管理会社に管理を委託し、現金預金の取り扱いを全面的に任せているのが一般的であり、当該記事の一番目のケースのように著名な大手といわれている管理会社でさえも同じ問題がおこっています。それは管理会社にとっても極めて重大な信用問題となっているため、大手の管理会社では内部統制を強化し、上記のような不正を未然に防ぐ体制を構築しているといわれているのですが、徹底がされていないのが現状です。
そもそも、マンションの管理業務は多岐にわたり、清掃業務のみを行う清掃業者や、記録業務のみを行う会計事務所などは、マンション管理適正化法による法規制の対象とはなりません。
マンション管理適正化法では、管理組合の会計の支出入の調定・出納並びに共用部分の維持・修繕に関する企画・実施の調整を「基幹事務」と定義し、これらを含む管理事務を、管理組合から委託を受けて業として行う場合を、法規制の対象となる「マンション管理業」としています。
マンション管理適正化法による主な規制の内容は、以下の通りです。
①マンション管理業者の登録制度、無登録業者の禁止(同法44条1項、53条)
②管理委託契約締結時の重要事項説明義務(同法72条)
③管理委託契約書面の交付義務(同法73条)
④財産の分別管理義務(同法76条)
⑤基幹事務の一括再委託の禁止(同法74条)
⑥帳簿の作成・保存義務(同法75条)
⑦管理事務の報告義務(同法77条)
⑧国土交通大臣のマンション管理業者に対する監督権限義務(同法81条ほか)
管理委託契約締結時の重要事項説明義務・契約書面交付義務
管理会社は、管理組合と管理委託契約を締結する際、事前に、全ての区分所有者等に対して、契約内容等に関する重要事項などを記載した重要事項説明書を交付したうえで、説明会を開催しなければなりません(適正化法72条1項)。また、従前と同一の条件で契約を更新する場合であっても、重要事項説明書の交付や理事長などへの重要事項説明は必要とされており、自動契約更新は許されておりません。(同条2項・3項)。
管理会社は、管理委託契約を締結した時は、理事長等に対して、契約書面を交付しなければなりません(適正化法73条)。
財産の分別管理業務
管理組合の財産が、管理会社によって目的外に流用されたり、管理会社の倒産などによって第三者の手に渡ったりすることを防ぐため、管理会社は、自己の財産と、委託を受けて管理している管理組合の財産を分別して管理しなければなりません(適正化法76条)。
分別管理の具体的な方法として、現在の適正化規則は、組合財産を取り扱う口座を、「収納口座」、「保管口座」、「収納・保管口座」に分類したうえで(適正化規則87条6項)、次の3通りの方法に限定しています(同条2項1号イ・ロ・ハ)。
①イの方式 管理費と修繕積立金をまとめて収納口座にて徴収し、そこから当月分の管理費用を控除した残額を、翌月末日までに保管口座部移しかえる方法。
②ロの方式 修繕積立金は直接保管口座にて徴収し、管理費は収納口座にて徴収し、そこから当月分の管理費用を控除した残額を、翌月末日までに保管口座へ移し換える方法。
③ハの方式 管理費と修繕積立金を、収納・保管口座で徴収する方式。
上記3種類の口座のうち、収納口座は管理会社名義であってもよいのですが、保管口座及び収納・保管口座は管理組合名義のものでなくてはならず、またその登録印やキャッシュカードは、一時的な例外を除いて管理会社で管理してはならないとされています(適正化規則87条4項、6項)。
イとロの方式を採用する場合は、管理会社は原則として第三者(通常、指定法人の一般社団法人マンション管理業協会)との間で、1カ月分の修繕積立金等の合計額以上の金額について、当該第三者が返還債務を保証することを内容とする保証契約を締結する必要があります(適正化規則87条3項)。
管理費や修繕積立金等の保管を管理会社に依頼するにあったては、マンション管理適正化法並びに適正化規則の定めに従い、管理費や修繕積立金等が管理組合名義の保管口座(または収納・保管口座)で管理されているか、その口座の通帳や印鑑の保管を管理会社に委ねてしまっていないかどうかについて、管理組合が意識的に注意することが最も重要であり、不正の抑止力となります。
さらに、最近では、新たな管理方式として、区分所有者以外の第三者が管理者になる管理形態を「第三者管理」とか「管理者管理」と呼んでいますが、管理者には管理会社が就任する場合が多く、第三者管理における監査体制には、業務監査を区分所有者から選任された監事が行い、会計監査を外部専門家が行う場合と、業務監査と会計監査とも外部専門家が行うケースの2つのケースがあります。この場合、管理のほとんどが「お任せの丸投げ状態」になるため、管理者による不当な利益相反や独断専横行為を予防するための管理組合における監査体制の構築がますます重要となってきています。