停電で断水 約半数 北海道胆振東地震 会員にアンケート 給水方式 「加圧式」が6割強 道管連

投稿日:2019年01月06日 作成者:福井英樹 (1502 ヒット)

 停電による断水は約半数ー。公益社団法人北海道マンション管理組合連合会(道管連)が会員管理組合を対象に実施した北海道胆振東部地震のアンケート調査結果で、こんな状況が明らかになった。
 アンケート結果は、12月4日付でNPO法人全国マンション管理組合連合会(全管連)ホームページに掲載されている。会員366組合のうち112組合が回答した。回答率30.6%。
 停電に伴うエレベーターや給水設備の稼働状況、非常用電源の有無、防災への備えなどを尋ねている。
 地震で「停電しなかった」と回答した管理組合はなかった。
 停電は、地震翌日の9月7日午後までに9割超の102件が回復したが、震災2日後の9月8日が8件(7.1%)あった。地震が起きた6日午前の回復は6件(5.4%)あったが、旭川市内のみ。
 停電でエレベーターが「動かなかった」と答えたのは95件で8割を超えている。3件(2.7%)は停電しても「動いた」と答えてた。
 エレベーター用の非常用電源は82件(73.2%)が「ない」と回答。16件(14.3%)は「ある」と答えたが、うち13件がエレベーターは「動かなかった」と回答しており、理由として「エレベーターを動かすほどの大きな非常用電源ではなかったものと推定される」と指摘している。
 給水方式は「直結方式」が42件(37.5%)、受水槽に水をためポンプで各住戸に給水する、高架水槽を設置しない「加圧式」が68件(60.7%)。その他2件(1.8%)。
 停電しても「水が出た」と答えたのは54件(48.2%)。公共の水道管が破損した1件を含む58件(51.8%)は「出なかった」と回答した。自家発電機があった40階建てのマンションでは最上階まで給水できたが、自家発電機がなくても15階の最上階まで出たケースもあった。
 給水用の非常用電源が「ある」と答えたのは3件で2.7%。9割超の108件が「ない」と答えた。
 管理組合が防災で備えていることは「入居者名簿」と「入居者緊急連絡先」が共に約8割。
 一方、災害時の要支援者名簿を作成しているのは約3割と低調。未作成は6割に上っている。
 共用部分の地震保険は71件(63.4%)が加入。未加入は32件(28.6%)。
 建物などでは柱や梁などの亀裂のほか「敷地内2カ所で陥没」などの被害もあった。
 地震で感じた自由意見では、防災組織が「素早い起動ができなかった」、「防災の不備を感じた」など反省の意見が目立った。
以上、マンション管理新聞第1092号より。

 大きな地震であってもマンションの骨組み自体が崩れることはほとんどありません。一般的に、マンションの共用設備は管理会社が管理しているので、区分所有者等の負担は少なくて済んでいます。
 しかしながら、地震のような天災への対応については、契約の対象外となっているのが通常で、管理会社には頼ることは出来ないと心得て、区分所有者等住人が自主的に対応しなければなりません。
 あの南海トラフ巨大地震は、いま現在も含めて、向こう30年間の間にいつ起こるかもしれないといわれています。
 発災時にマンション内に人がいるかいないかで管理組合での対応方法も変わってきます。
 マンション内の居住人数、年齢特性、地域特性を踏まえた上で、適切な防災対策を準備する必要があります。
 激しい揺れが予想される地域、甚大な火災発生の危険度が高い地域、津波の危険度が高い地域、山崩れの危険度が高い地域、といった違いがあり、ライフライン(電気、ガス、給水、排水等)の復旧にどれくらいの時間を要するかといったことも考えなければなりません。
 さらに、マンションの立地場所の地盤が強いか弱いか、埋め立て地等かどうか、といった条件によっても被害状況は異なってきます。
 管理組合として平常時から万全な防災対策をとっているかよっても被害は大きく異なります。
 例えば、あらかじめ災害時の緊急時に要する事項に関する決定権を理事会だけでなく、防災委員会、緊急対策本部等に、被災時の一定期間、全権委任できるような柔軟な取り決めをしておけば、迅速な災害対応が可能になります。
 また、建物の修復作業が始まるのはライフラインの復旧後になります。
 復旧工事に入る時には、建設、電気、上下水、ガス、エレベーターなどの専門施工業者によって、点検、修理、確認などを行う必要があり、これらの施工業者の災害時の対応について、平常時から管理会社に確認しておかなければなりません。
 それらの手順を防災マニュアルの中に組み入れておき、管理会社社員が不在時でも、区分所有者等の住民だけで対応できるように情報を共有しておくことが大切です。
 さらに、高層マンションや超高層マンションは上層階ほど揺れが激しくなるので、家具の固定や設備機器などの安全対策は高層階、中層階、低層階等、それぞれ階層によっても大きく異なってきます。
 マンション自体は壊れなくても家具等による圧死やケガ、同時多発火災や、ガスや電気の復旧時に起こる通電火災等によって大きな被害を受けることが考えられます。
 また、上層階ほど階段による避難は極めて厳しく、低層であっても階段を使って降りることが困難な高齢者や病人などをいかに共助していくかなど、諸々の課題があり、家族だけでなく、近隣住戸の助け合いを含めた体制づくりが必要となってきます。
 高層階の住戸まで重たい飲料水や食料品等を階段で運び上げることは困難を極め、非常用の備えは通常より多めの7日間から10日間分は確保する必要があります。
 清田地区では、戸建て住宅が液状化により甚大な被害が出ておりますが、一般的に、杭基礎のマンションであれば杭は折損しても大きな不同沈下は起こりません。しかしながら、建物自体は安全でも、周辺の地面の移動との変位差が大きい地盤では、建物内と屋外とを繋ぐ配管は切れてしまうことがあります。
 水平方向と上下方向とがそれぞれ10センチ程度であれば、フレキシブル配管の想定内なのですが、数十センチとなれば、通常の配管対策では対応できず、上記のように断水が続いてしまうことも考えられます。
 このようにマンションの被害はその立地、建物の特性、地盤、居住階、家族構成などで全く異なります。いつ起こるかもしれない南海トラフ巨大地震、被災することになっても、自助と共助のコミュニティ力を発揮し、もともとハード面の強固なマンションならではの特性を活かした防災対策の準備をすることが求められています。 

 


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