「理事会機能不全」理由に 区分所有者3人 声優養成所の迷惑行為差し止め求めて提訴 総会決議経ずに『57条請求』 裁判所は主張一蹴 許容される根拠ない」

投稿日:2018年10月31日 作成者:福井英樹 (2202 ヒット)

 総会決議を経ていない57条請求は通らずー。専有部分の用途違反や共用部分での迷惑行為を「共同の利益に反する行為」だとして、大阪市淀川区のマンション区分所有者3人が、住戸を声優養成所として使用する法人を相手取り、区分所有法57条3項を理由に使用差し止めを求めた訴訟の判決が9月19日、大阪地裁であった。梅本聡子裁判官は、総会決議を経ていないため「差止請求はできない」と判断。迷惑行為も「認めるに足りる証拠はない」と請求を棄却した。
 被告は30年以上前に、このマンションで声優養成所を開業した。教室として2戸を使用している。
 住戸は運営を委託された別の会社が区分所有者から賃借しており、土曜午後3時~9時と日曜午前10時~午後6時30分の間で授業を行っている。
 裁判で原告は、管理規約の事務所に類する用途として「診療所等」の記載がある点から「練習場として使用することを許容しない」と主張した。
 その上で、廊下や階段での生徒の話し声やエレベーターの占拠などで「平穏な生活と円滑な通行や使用が障害されている」などと指摘。区分所有法6条1項の「共同利益に反する行為」に該当するとして、同法57条による「行為の停止」を求めた。
 総会での指定や訴訟提起の決議を経ていないが、理事会役員が長年同じで不利な行動を排除する傾向があり、養成所の代表も役員だとして「理事会が機能不全に陥っている場合は差止請求できる」などと主張した。
 被告は、教室としての使用は、禁止用途を定めた管理規約22条3項の趣旨に照らし「許容される行為である」と反論。ダンスの授業は提訴前の同年10月以降はマンション外でしていると主張した。
 梅本裁判官はまず、原告が同法57条3項の訴訟提起の指定を受けていない点から「本件差し止め請求をすることができない」と判断。仮に例外の余地が認められるとしても「一部の区分所有者のみで請求が許容される根拠はない」などとして、原告の主張を退けた。
 その上で、共同の利益に反する行為について「念のため検討」した。管理規約22条1項は「他の居住者の迷惑となるような営業その他の行為を行わないものとする」と抽象的で、教室としての使用が「同規定に違反するとして直ちに使用差し止めの対象となるとはいえない」とした。
 共用部分での生徒の話し声などの音量や居住部分への影響の程度も不明だと指摘。通行妨害やエレベーターの占拠も認められないことに加え、幹線道路や鉄道に隣接し騒音がある点や、授業が土日で深夜に及んでいないことを考慮し「受忍限度を超えているとまでは認めるに足りない」として、請求を棄却した。
 以上、マンション管理新聞第1086号より。

『原告が同法57条3項の訴訟提起の指定を受けていない点から「本件差し止め請求をすることができない」と判断。仮に例外の余地が認められるとしても「一部の区分所有者のみで請求が許容される根拠はない」として、原告の主張を退けた。』という当該判断は妥当であり、区分所有法の原点に則っています。

 区分所有法では以下のようになっています。

(共同の利益に反する行為の停止等の請求)
第57条 区分所有者が第6条第1項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる。
そして、第2項では、「 前項の規定に基づき訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない。」
さらに、第3項では「管理者又は集会によって指定された区分所有者は、集会の決議により、第1項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。」とあります。
 従って、本条第1項の規定に基づく共同利益背反行為の停止等を請求する訴訟の提起は、集会の決議によらなければならず、1項の区分所有者の全員または管理組合法人は、集会の決議によって初めて訴訟を提起することができ、また、規約により、訴訟の提起を管理者または理事その他の機関に訴訟提起の権限を授権しておくこともできません。

 


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