8月26日に再建決議 シティマンション保田窪本町 取り壊し決議から段階経て 熊本地震 一般社団の「事業団」設立 「自主再建方式」で経費削減も
熊本地震で被災し全壊判定を受けた熊本市東区の「シティマンション保田窪本町」(1991年竣工、37戸)の敷地共有者が8月26日に被災マンション法に基づく再建決議を行う予定だ。建物は6月に公費解体が完了し、同法の事前説明会を7月に開いた。再建事業は今年7月9日に設立した「一般社団法人シティマンション保田窪本町再建事業団」が行う。熊本地震の全壊判定のマンションで同法を使った再建決議は初とみられる。
同事業団の代表理事を務める房野良太さんによれば、再建決議に先立ち、6月18日に集会の招集を通知。7月16日に事前説明会を実施し、17世帯が出席した。欠席した敷地共有者の中には、再建には賛成だが、事業不参加の意向を持つ人もいるという。
招集通知した当時は同事業団の設立前だったため、敷地共有者の議決権の5分の1以上で集会を招集した。従前から開いていた任意の説明会の際に法人をつくり再建を目指すことを敷地共有者に説明しており、今回の説明会でも異論はなかった。
再建建物の概要は、従前11階建て37戸を、14階建て51戸にする予定だ。最終的なプランは今後詰めるが、専有面積は最小約56~最大約81平方メートル。バルコニーは同約21~同約32平方メートルと広く確保する。構造は熊本の分譲マンションでは少ないとされる免震構造を採用する計画だ。ほかに自走式駐車場やカ―シェア、最上階に集会室を兼ねたパーティールームを設ける方針にしている。
熊本市の優良建築物等整備事業を利用するために公開空地の確保や、駐車場などの用地として、敷地(1249.15平方メートル)に隣接している東・西・南側の土地3筆計950.96平方メートルを取得する予定にしている。
建築工事費の概算額は、設計見積もりで税別約13億円で、実際の設備の見積もりを考慮した場合で11億5000万円。建築費以外の調査・設計費や土地の取得費用などは9500万円。11億5000万円の場合、補助金などを加味した個々の負担額の概算は約1550~2594万円。
再建事業は、デベロッパー等への土地譲渡方式や事業代行方式ではなく、経費削減のため、自主再建方式で進める。建設会社への工事発注、金融機関や行政との折衝など具体的な業務は、今年7月9日に設立した「一般社団法人シティマンション保田窪本町再建事業団」が行う。
房野さんは「熊本にないようなマンションを造りたい。決議が無事に取れて、その後早期にプランニングを固め、できれば年内に建築確認までたどり着きたい」と話す。
震災で同マンションは傾斜したほか、梁が下がったり、柱が損傷するなどの被害に遭った。罹災証明は全壊。地震保険は全損。
被災区分判定で修復可能とされたことを受けて、管理組合は検討委員会を設けて実際に修復できるのかどうかを検討し、別の設計事務所に見積もりを依頼した。
県外や地場のゼネコンに修復の話を投げ掛けたが、マンションでの実績がない1社を除いて、断られた。「専有部の床を剥がして配管なども調査しないと工事後の責任が負えず、きちんとした修復は出来ないということだった」(房野さん)。
同委員会では建て替えや敷地売却の方向も考えた。建て替えは見積もりで提示された1平方メートル当たりの単価約38万円と書籍等で調べた約26万円をベースに検討した。敷地売却はくいや基礎の撤去費用などを差し引くと分配金が残らない懸念があった。
結局、公費解体の申請期限が迫っていたため、昨年9月に被災マンション法に基づく取り壊しを決議した。大規模一部滅失の根拠は震災前後の同マンションの評価額を比較し、減損率86%と資産価値が2分の1以上減損していた。
公費解体は今年6月28日に完了。建物解体後、任意団体の世話人会が再建に向けて説明会を開いていた。
以上、マンション管理新聞第1079号記事より抜粋。
○改正被災区分所有建物再建等特別措置法(改正被災マンション法(2013年6月26日公布・施行))
被災マンション法の改正の契機は2013年3月11日に発生した東日本大震災でした。1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災を契機に制定された同法を改正して、解体、敷地売却を多数決で可能とする制度を創設し再生のメニューを追加したものです。
改正被災マンション法は、マンションの全部滅失の場合における措置として、旧被災マンション法での再建決議制度に加え、多数決による敷地売却制度を創設し、新たに、マンションの一部滅失の場合における措置として、多数決による解体決議、敷地売却決議、建物・敷地売却制度を創設し、また、団地内建物が滅失した場合における措置として、再建承認決議制度、一括承認決議制度を創設しました。
全部滅失の場合は、敷地共有者集会が開催され、再建決議あるいは敷地売却決議が可能となります。いずれも議決権は敷地の持分価格の割合とされ、敷地共有者等(敷地準共有者含)の議決権の5分の4以上の賛成が必要となり、敷地売却決議の場合も再建決議と同じく、反対者に対して売渡請求権を行使することにより、敷地の売却に参加する者または買受指定者に敷地の権利が集約するようになっています。
大規模一部滅失の場合は、建物敷地売却決議、建物取壊し敷地売却決議、取壊し決議の制度があり、いずれも、こちらは、区分所有者の集会で、区分所有者および議決権並びに敷地利用権の持ち分の価格の各5分の4以上(取壊し決議は区分所有者、議決権の各5分の4以上の多数)で決議されることになります。
以上、「マンション法実務ハンドブック」より抜粋加筆。
本法は、「大規模な災害で政令で定めるもの」に限って適用されるという被災地の健全な復興のための公益的な性格を持つものである。従って、本法の適用がない個別災害には、全部が滅失した区分所有建物の旧区分所有者のうち一人でも再建等に反対すれば、同一敷地上に同一の区分所有建物の再建等をすることはできない。また、一部が滅失した区分所有建物の区分所有者の一人が反対すれば、区分所有建物およびその敷地の売却等をすることも出来ない。前者の場合には、他方で本法が定める分割禁止の適用はないので、共有物分割請求の訴えにより敷地の一部を分与する現物分割、競売により土地を売却してその代金を分ける代金分割(民法258条)、請求者に補償金を支払う補償分割等(一部または全面的価格賠償。最判平8.10.31)の方法で権利の調整を図ることになる。以上、「コンメンタール区分所有法」より抜粋加筆。