新しいギルドの形成ー大規模修繕工事で新規参入を阻害する建築設計事務所や施行会社
大規模修繕の業者選定の際、建築事務所や工事施行会社の選定要件を記した募集要項を作ります。その募集要項の中には、会社の経営規模であったり、建築設計事務所であれば、一級建築士が何名いるとか、過去の大規模修繕工事数であるとか、選定要項が掲載されています。設計実績や工事実績では、今までの大規模修繕の経験が基準となりますが、1年間に5件とか10件といった下限を決めると、その時点で新規参入は不可能となります。建築設計事務所でも工事施工会社でも同様で、新規参入ができないのです。例えば、誰かが「どこどこの建築設計事務所に決めたい」と考えれば、その建築設計事務所固有の経歴等を選定基準に加えれば、その建築設計事務所しか選定されることがなくなります。そこまで極端でなくとも、その建築設計事務所プラス数社、全部で4~5社くらいしか残らなくする操作はできます。工事施行会社についても同様で、選定事項を作った時に、資本金や実績が、それに合致するのが4社だとすると、その段階でどの4社かはわかるわけで、その4社はギルドを形成したことになって、その4社以外には仕事が行かないと言うことになります。極端な例をいいますと、創業10年以上とか、専門工事会社なら資本金1億円以上という募集要項を見かけますが、そうなると、関西で言えば、4~5社ぐらいしか出てこなくなりますし、さらに地元での実績云々となったら、本当に絞り込まれてきます。これでは、超大手のゼネコンさえも参入できなくなります。さらにまた、「経営事項審査結果通知書」等の点数について、上の方で線引きをしてしまうのです。ROIとかROAとか自己資本率とかの話です。このようにして優秀な専門工事会社を排除してしまう傾向があります。これが今の大規模修繕での一番の問題です。まさしく、ギルドの形成なのです。「初めてのマンション大規模修繕ーオープンブック方式が常識をかえるー」岡広樹・三浦明人共著 東洋経済新報社より、抜粋。