専用使用権分譲の駐車場使用料1500円から2万6000円への値上げは「相当」 判例時報 マンション管理新聞第1060号から

投稿日:2018年01月21日 作成者:福井英樹 (4856 ヒット)

<判例時報2347号>
 駐車場専用使用権が分譲された築40年超のマンションで、1500円だった使用料を約1万3000円~2万6000円に値上げする総会決議を行った管理組合が、値上げ分の支払いを拒んだ区分所有者3人に決議の有効確認と、使用料値上げ分に加え弁護士費用の支払いを求めた事件の判決がおととし、東京地裁であった。阿保賢祐裁判官は、弁護士費用約21万円を含め、管理組合の請求をほぼ全額認めている。
 判決はおととし9月15日付。双方は控訴せず、確定している。
 マンションは1973年入居。裁判で問題となった駐車場専用使用権は3台分で、屋内120万円、屋外80万円で分譲されていた。当初使用料は無料だったが、築23年の96年ごろに月額100円に有償化。2008年に同1500円に改定し、11年には月額1万3000円~2万6000円に改定する総会決議を行った。駐車場部分の固定資産税・都市計画税や面積割合に応じた管理費・修繕積立金は購入者が支払う契約になっていたが、実際には支払われてこなかった。
 裁判では1998年10月30日の最高裁判決が示した判断基準を踏襲。「増額の必要性・合理性が認められ、かつ増額された使用料が社会通念上相当な額」かどうかが争点になった。
 阿保裁判官は、駐車場の分譲価格が住戸価格とは無関係に定められたものであった点や、約30年前まで賃貸に出されていた時の賃借料が6000~2万円程度で、総会決議時点では月額2万5000円程度の使用料が設定された近隣駐車場もあった点などを考慮。
 駐車部分の塗装作業や漏水部分への対応が行われており、今後マンション老朽化に伴い支出費の増大が見込まれる、すでに専用使用権を購入するに支払った対価に応じた使用利益を十分に得ているなどの点から「値上げには必要性・合理性があり、増額された使用料も社会通念上相当」だと判断した。
以上マン管新聞第1060号より。
従来からの以下の最高裁判例を踏襲。
以下「コンメンタールマンション標準管理規約」評論社より。
 分譲業者との間で駐車場専用使用権の設定がある場合、分譲業者がその敷地(区分所有者の共有)内に駐車場を設けてこれを一部の特定の区分所有者のみに分譲する販売方式がとられ、それを前提とした規約が設けられている場合がある。このような場合には、共有する敷地をめぐって、その専用使用者と管理組合との間に紛争が生じることがある。これまでに管理組合の駐車場専用使用権の消滅決議や使用料の有償化または増額決議などについての判例が存在する。最高裁は、前者に関し管理組合の集会での消滅決議については、同事案における駐車場専用使用権の消滅は区分所有法第31条1項にいう「特別の影響」に該当するとして駐車場専用使用権者である区分所有者の承諾を得ない決議は無効であるとし、後者については、管理組合は規約又は集会決議をもって専用使用権者の承諾を得ることなく使用料を定めまたは増額をすることはできるが、その額が社会通念上相当な額を超えるときは「特別の影響」を及ぼすとして専用使用権者の承諾を要するとした(高島平マンション事件=最判平10・11・20、シャルマンコーポ博多事件=最判平10・10・30)。以上、「コンメンタールマンション標準管理規約」評論社刊より。

 上記高島平マンション事件では、「特別の影響」を及ぼすべき時とは、規約変更の必要性及び合理性と、一部の区分所有者が受ける不利益とを比較考量し、その不利益が受忍度を超える場合をいうとされました。そのうえで、当該区分所有者の専用使用権の消滅による不利益は受忍度を超え、その承諾が必要であると判断されたわけですが、平成14年に区分所有法が改正され、区分所有法第30条第3項では、区分所有者間の衡平が図られるように定めなければならないとされました。この条文の趣旨からすれば、今後は、独占的な使用権者の承諾の必要性の判断は極めて狭められていくものと推測されます。


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